欧州のスポーツイベントが儲かるのは有料放送?無料放送?
最近、ヨーロッパの放送関連組織EBUが欧州スポーツについて詳しい調査を行いましたのでご紹介したいと思います。尚、EBUは各国の主要地上波が基本的にメンバーになっているので、そこを考慮しながら読んで頂くのがいいかと思います。
EBUがAmpere Analysis社に委託したレポートによると、西ヨーロッパでは過去10年間でスポーツ権の有料放送のシェア(金額ベース)が20%増加した一方で、スポーツファンの3人に1人しかプレミアムスポーツチャンネルにアクセスしていないことがわかりました。
報告書によると、無料放送のチャンネルはヨーロッパの8億人以上の人々に視聴されており、スポーツへの関心を高め、より多くの視聴者を獲得し、スポンサーにとっても価値のあるものとなっています。
ほとんどのスポーツでは、放映権契約は基本的にリーチと収益のトレードオフであると報告書は強調しています。スポーツの権利保有者にとって、相対的な収益の組み合わせは非常に重要です。
あるスポーツのスポンサーシップ権の価値は、そのリーチと連動しています。ヨーロッパの無料放送のテレビで1分間放映されると、スポンサーにとっては22万ユーロ相当の商業的価値があります。しかし、あるスポーツが無料テレビからプレミアムテレビに移行すると、スポーツファンの間でのリーチが平均68%も低下します。
無料テレビは、より多様なスポンサーを惹きつけるため、多くのスポーツにとって、より有益なものとなります。いわゆるティア2(ウィンブルドンなど)とティア3(テニスツアーなど)のスポーツが有料放送に移行する場合、無料テレビのリーチの価値を相殺するためには、放送権の価値を40%以上引き上げる必要があります。
「スポーツ連盟は、放映権収入と、無料チャンネルとの提携によるリーチの拡大とそれに伴うスポンサー価値とのバランスを考慮する必要があります」と、Eurovision Sportのディレクター、Glen Killane氏はアドバイスします。「公共サービスメディアは、スポーツのブランドを確立し、観戦や参加する新しいファンを惹きつけるのにも役立ちます」。以下は主なスポーツの収入の内訳です。
この他フォーミュラEは、無料放送、デジタル戦略、ブランドパートナーシップの組み合わせにより、大きな成長を遂げているスポーツの一つです。ヨーロッパでは主にイギリスBBC、イタリアRAI、スペインRTVEなどの公共サービスメディア機関によって放送されていますが、世界の視聴者数は約4億1,100万人(2019年)にまで増加し、収益は2015年の2,100万ドルから1億6,200万ドルに増加していますが、これは放送権ではなく、主にスポンサーシップやパートナーシップによってもたらされたものです。
ちなみにこちらが、各国でのスポーツが有料・無料のどちらで放送されているか図にしたものです。
また、視聴者が好んでお金を支払うスポーツについても大きな差がありました。
Ampere Analysis社のリサーチ・ディレクターであるリチャード・ブロートンは、「どのスポーツも発展段階が異なり、考慮すべきトレードオフも異なりますが、それでもスポーツ連盟がイベントの放映方法についてますます厳しい決断を迫られていることは明らかです」と指摘します。「権利収入が高騰していた時代は終わりを告げ、ストリーミングサービスが、多くの権利者が期待するようなヘッドラインバリューを支えることは明らかではありません。このような背景から、権利戦略と、それに伴う個々の取引の長所と短所については、慎重に検討する必要があります」と述べています。
放映権料が高騰することはこれ以上ないでしょう。一方で人件費など様々なコストは上がっています。スポーツイベントにとってどのような収益構造が適切か、日本のスポーツにとっても同じことが言えるのではないでしょうか。
(画像はすべてAmpere Analysis社のレポートより引用)
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