頼まれたら、イエス!と言ってみる。
「収入が十分にないけれど、働いてお金を稼ごう、という意欲も湧かない、それに生活も切羽詰まっている」という相談を時々されることがある。
ご存知の通り、僕は経済的な成功者ではないので、そういう時、上手いアドバイスをすることができない。
そういう時、神を信頼しましょう、とか、瞑想をして落ち着きましょう、と言われても、やはり、無理がある。
地球に生きている限り、お金は必要だ。瞑想をすれば天からお金が降ってくるわけではない……。
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この前お話した女性のM様のエピソードがもしかしたら、参考になるかもしれない。
M様はここ数年、専業主婦として家事に専念する生活をしていた。
老後の生活は、夫の退職金をあてにしていたらしいのだけれど、夫が株取引につぎこんでしまい、大損したらしい。
やがて、夫から「なあ、悪いんだけれど、パートに出てもらえないか?」と言われる。
M様は夫の計画性の無さに呆れたけれど、そもそも夫の退職金は彼が長年働いて勝ち取ったものなのだから、文句は言えないな、ということに気づいた。
そして、渋々、スーパーのアルバイトに申し込んだ。
「品出し」の担当で採用されたのだけれど、社員から、
「申し訳ないんだけれど、人が足りないから、ベーカリー部門(パン屋)に行ってくれないかな?」と頼まれる。
M様は戸惑ったが、渋々、パンづくりを始めた。
これが「当たり」だった。
「元々、パンが好きだったんです」と言う。もちろん、つくるだけで食べることはできない。食べたら、怒られて解雇される。
でも、大好きなパンを作ることがこんなに楽しいことだったのか、と気づいた。そして、正社員から、二年以上働いて実績を積めば、調理師免許を取れる、ということを教えてもらった。
M様は俄然、やる気になった。
息子から、「何だか楽しそうだね。顔に張りが出てきたみたい」と言われるようになる。
彼女は姑と同居していたのだけれど、働きに出るようになって、顔を合わす時間が減った。
さらに、その姑も嫁に任せていた家事をやるようになって、元気になった。どうやら認知症の予防にもなりそうだ。
一挙両得である。
「ちなみに調理師免許を取ったら何かに活かすんですか?」と僕。
「……。それがまだ何も考えていないんです」とM様。
「でも、調理師免許という目標があるから頑張れる気がするんです。もちろん、家計のこともありますけれど、わたし、昔からお金のためだけに働けないんです。若い頃は子育てって言う目標があったから頑張れたんですけれど……」
ちなみにM様はスーパーの面接に合格するまで、ホテルの朝食準備などの面接に立て続けに落ちまくった。でも、落ちまくらないとパン作りとは出会えなかった。
「人生万事塞翁ってありますけど、まさにそれだと思うんです。結局、起こってくる出来事を信頼するしかないのかなって最近は思います」
僕はM様に同意した。
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「収入が十分にないけれど、働いてお金を稼ごうという気が起きない」という相談には、
何かを頼まれたら、とりあえず、それをやってみる、ということしか、今の僕には答えられない。
M様は夫から「パートに出てもらえないか?」と言われて、働き出したら、今度はパン作りをしてもらえないか?と言われた。
彼女はイエス、イエスと連続して言った。そうしたら、「あれ、働くことって楽しいな」となった。
働く意欲が湧かない、ということは共感する。
でも、特に若いひとが、ずーと何もしないのはさすがに、しんどいのではないだろうか……?
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八方塞がりになった時、頼まれごとにイエス!と言ってみる。
そうすれば、予測できない展開が待っているかもしれない。
ワクワクすることや、好きなことを仕事に、と言われる昨今の世の中だけれど、
僕は、ワクワクよりも、地道にコツコツと続けられる仕事──これなら続けられそうだな、という仕事を選んだら、良いと思う。
そして、何が自分に合っているか、ということを頭で考えて、アレでもない、コレでもない、とやっているのではなく、思い切って跳ぶことだ。
つまり、イエス!と言う事なのだ。きっとその時は、他者からの働きかけがあるはずだ。
無かったとしても、内側(ハート)から来る欲求にイエス!と言う事だ。
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