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2日目_夕方_エンジュシティ

 この文章は「二次創作」です。


ちょっぴりえっちな美少女アヴュールとまじめなモンジャラのレポート


――やけた とう
  なぞの おおかじで やけました
  きけんなので ちかよらないでください――

「‥‥‥」
 アヴュールはふと、意識を引っぱられて吸いよせられるようにふらっと、エンジュシティの北西を訪れた。
「‥‥‥」
 無言で立つアヴュールの眼前には、焼け落ちた塔が建っている。
 モンジャラもアヴュールの足元に立って、ボロボロの建物を見つめる。
「すごい‥‥‥ね‥‥‥」
「もじゃぁ‥‥‥」
 塔が火事によって焼けたのはもうずっと昔のことのはずなのに、黒く焼け焦げた壁や柱の残骸を見ていると、微かに灰の臭いが鼻を突くような気がした。それほどに、“やけたとう”はそのままの姿でそこに残されていた。
「‥‥‥元々はね。“スズのとう”と対で、“カネのとう”って呼ばれる塔が建ってたんだって」
「もじゃぁ‥‥‥」
「でもね。雷が落ちて、大火事になって、そのまま焼けちゃったんだって‥‥‥」
「もじゃぁ‥‥‥」
 アヴュールの頭に、今日の昼間見た“スズのとう”や“マダツボミのとう”が浮かぶ。
「“カネのとう”も、“スズのとう”とか“マダツボミのとう”みたいに、地震とか揺れには強かったはずなのにね‥‥‥。木造だから、火事で燃えちゃうんだね‥‥‥」
「もじゃぁ‥‥‥」
 夕日を浴びて、燃えているように色づく“やけたとう”。
 ふと東の方を見上げれば、そこには今も確かに残っている立派な“スズのとう”が建っている。どちらも夕日に照らされているのに、その印象は全く異なる。
「なんか、さみしいね‥‥‥」
「もじゃぁ‥‥‥」
 モンジャラが、隣に立つアヴュールの横顔を見上げる。
 その顔もまた夕焼けに染まって、いつもとはどこか違う表情になっていた。
「ふふ。ごめんね。なんかちょっぴり感傷的な気分になっちゃった」
「もじゃー!」
「ふふふ。ほら、昔の人が建てた古ーい建物を見ながら、色んなことを考えてたらさ。なんだかちょっと、切ない気分になっちゃったの」
 そう言うと、アヴュールはモンジャラを優しく抱き上げる。すこしくすぐったいツタの感触が、手のひらに優しく響く。
「モンジャラ。昨日も今日も、いーっぱい歩いたね」
「もじゃー」
「楽しかった?」
「もじゃー」
「ふふふ。よかった」
「もじゃー?」
「え? 私? 私ももちろん、楽しかったよ」
「もじゃー」
「ふふふ。じゃあ、ご飯食べに行こっか」
「もじゃー」
 緩めた腕の中から勢いよく飛び出したモンジャラは、地面に着地するとアヴュールを振り返る。
 アヴュールは幸せそうに笑い、歩き出した。
 夕焼けに染められた“やけたとう”を背にして、アヴュールとモンジャラは、次の一瞬に向かって一歩一歩、進んでいく。
 終わりに向かって、ゆっくりと、を進めていく。


ちょっぴりえっちな美少女アヴュールとまじめなモンジャラのレポート