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2日目_昼下がり_エンジュシティ

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 この文章は「二次創作」です。


――ここは エンジュ シティ
  むかしと いまが
  どうじに ながれる れきしの まち――

「おっきーねー‥‥‥」
「もじゃー‥‥‥」
 小さな池の前に立って、アヴュールとモンジャラは、目の前の木々の奥にそびえる高い塔を眺めていた。
「“スズのとう”は、とっても神聖な塔だから、エンジュのジムバッジを持ってないと入れないんだって」
「もじゃー‥‥‥」
「近くで見てみたかったねぇ‥‥‥」
「もじゃー‥‥‥」
 しみじみと目前の塔を見上げていたアヴュールたちの前に、目の前で紅葉している木々から落ちたのであろう、オレンジ色の葉が水面みなもを滑るように漂って流れてきた。アヴュールたちの視線も池に落ちる。
 水面には、色鮮やかに彩られた木々と高い高い“スズのとう”が映っている。こんなにも近くにあるのに、手を伸ばしても触れることすら叶わない。まるで鏡花水月のような“スズのとう”。
「ねぇ、モンジャラ」
「もじゃー?」
「エンジュジムに挑戦してみる? モンジャラなら、ひょっとしたら勝てるかも‥‥‥!」
「もじゃっ!?」
「昨日も、私にからんできた男の子たちのポケモン、あっという間にやっつけちゃったし」
「もじゃー! もじゃもじゃー!」
「ふふふ。冗談だよ。もー‥‥‥、モンジャラは真面目なんだからぁ」
「もじゃー」
「ふふっ」
 アヴュールは辺りに漂う空気のように軽やかに笑うと、その視線を再び前へと向けた。
「‥‥‥ありがとね、モンジャラ」
「もじゃ?」
 真っ直ぐに前を見つめてつぶやいたアヴュールが、どこを見ているのか、モンジャラにはわからない。モンジャラは、不思議そうな目でアヴュールの横顔を見上げる。
「さあ、写真撮ったら歌舞練場かぶれんじょうに行こう!」
「もじゃー」
舞妓まいこさん。踊りも上手だけど、ポケモンバトルも強いんだって」
「もじゃー」
「バトルしてみる?」
「もじゃー‥‥‥」
「ふふふ。モンジャラはポケモンなのに、バトルは好きじゃないよね‥‥‥?」
「もじゃー」
「いや、ほら。私はポケモントレーナーじゃないからさ。遠慮してるのかなー、とか思ったりもするんだけど‥‥‥」
「もじゃっ! もじゃもじゃー!」
「ふふふ。そっか。モンジャラは優しいもんね」
「もじゃー。もじゃもじゃー」
「ふふ」
 否定するモンジャラを見つめてうれしそうに笑ったアヴュールは、すっと顔を上げて紅葉に視線を戻す。
「‥‥‥紅葉、綺麗だねぇ‥‥‥」
「もじゃ? ‥‥‥もじゃぁー」
 急に話題を変えたアヴュールの視線を追いかけて、モンジャラも池の奥に視線を向かわせる。
「私たちじゃ入れないけど、あの建物を通り抜けるとね。そこから、“すずのとう”まで続く短い道があるんだって」
「もじゃー」
「“すずねのこみち”って言うらしいんだけど、紅葉がとーっても綺麗らしいの」
「もじゃー‥‥‥」
「写真がネットで見れるから、後でお茶しながら一緒に見よ?」
「もじゃー」
 モンジャラの返事に微笑みを返し、アヴュールは電子端末を取り出す。
 インターネットを使えば、手の平の中に映し出せるのに、決して手に入ることのない遠い景色の写真を見るため、ではなくて。
 確かに二人で、全身で感じている今を切り抜くために――。
 また一つ、思い出の一ページを彩る写真が増えていく。
 それは、ポケットに入るほどの、君との景色。


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