【詩】アドリブ会話の台本


 小学校にて。
 教室、クラスの女子との会話。

「ねぇBちゃん、どうしてしゃべらないの?
 つまらないのー! もっとあたしと話してよ!
 あ、ねぇねぇ。
 この間ね、隣りのクラスのSくんとTくんがね、また喧嘩したんだって。
 男の子って、ほんと馬鹿だよねー。
 女の子の方がオトナよ。うちのクラスも、女の子の方が仲がいいし。
 そういえば、担任のY先生、結婚したんだって!
 かっこいいし、優しい先生だったから、幸せになってほしいなー。
 ねぇBちゃん、どうしてしゃべらないの?
 つまらないのー! もっとあたしと話してよ!」

 

 
 中学校にて。
 図書室、委員会の女子との会話。

「Bさんって、あんまり話さないよね。聞き上手っていうかさー。
 でもさ、もっと積極的に話した方がいいよ。
 ところで知ってる?
 U子がずっと学校休んでるって。
 隣りのクラスって、女子の派閥がちょっと怖いじゃん。
 うちは平和でよかったよー。
 あんまり目立って標的にされるのも嫌だけど、ぎすぎすした教室にいるのも嫌だしね。
 あ、そうだ。この間部活の後輩にさー、すっごく可愛い男の子が入ったの!
 なんかね、リスみたいなの。くりくりっとした目でね、張り切った感じがまた......
 ねぇ、聞いてるー?」



 高校にて。
 学校帰り、とある女子部員との会話。

「Bさんって、あんま話さないよね。ううん、全然気にしてないんだけど。
 ちょっとは話さないと、『何も考えてない』って思われるよ。
 そういえば、Bさんって何が好き? あたしはチーズタルトかな。
 ほら、知ってる? 駅前の新しいケーキ屋さん。
 この前、お姉ちゃんがそこのケーキを買ってきてくれてね、すごく美味しかったの。
 そういえば、昨日のテレビでやってた路地裏の大福屋さんもおいしそうだったなー。
 一駅先の街に行かないといけないから、ちょっと面倒なんだけどね。
 早くお小遣いもらえないかなー。
 ……ねぇ、Bさん。聞いてるの?」





 話の主役はいつも『自分』


 自分の台詞を読むのに必死で 
 相手の口元なんて見ていない



 会話の台本なんて要らない
 だって 好き勝手話せばいいんだもん
 アドリブだけで
 この劇場は成り立っちゃう



 だから 私は話さない



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見出し画像には、『エビハラナオト』様のイラストをお借りしました!

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