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【詩】 うらおもて


ある日 見知らぬおじさんが
1枚のコインをくれた

片面には天使が笑ってる
片面には悪魔が笑ってる

どっちが表か尋ねたら
「振る人によって 表は違う」と言われた


わかんない
わかんない
試しにぼくは パパにコインを渡してみた


パパはいつもしかめっ面
寡黙といえば聞こえがいいけど
ぼくは怖くて仕方がない

パパは黙ってコインを投げた
「きんっ」と軽い金属音
電球の明かりに照らされて 
コインは弓なりに落ちていく
こつんとテーブルに落ちていく

ぼくはコインを覗き込む
天使がにこにこ笑ってた
ぼくには訳がわからない


ママにもコインを渡してみた

ママはいつも にこにこ笑顔
ご近所さんとも仲良しおしゃべり
ぼくは嬉しくて仕方がない

ママは楽し気にコインを投げた
「きんっ」と軽い金属音
電球の明かりに照らされて 
コインは弓なりに落ちていく
こつんとテーブルに落ちていく

ぼくはコインを覗き込む
悪魔がにこにこ笑ってた
ぼくには訳がわからない


おじさんはきっと嘘つきだ
どっちが表か 分からないまま
ぼくはコインに飽きちゃって
つまらなそうに 投げてみた

「きんっ」と軽い金属音
電球の明かりに照らされて 
コインは弓なりに落ちていく
こつんとテーブルに落ちていく


ぼくはちょっと驚いた
コインがテーブルの隙間に刺さって
どっちの顔にも 倒れなかった


これじゃあ どっちが表か分からないや

やっぱり あのおじさんは嘘つきだ


ぼくはコインを抜き取って
ぽいっとゴミ箱に捨てちゃった



・・・・・・・・


ゴミ箱のコインは
やはり どちらにも倒れなかった




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見出し画像には、『yumetama』様のイラストをお借りしました!

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