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【詩】 きっと、夏の雲と同じ

ねぇ、覚えていますか
静かな教室、揺れるカーテン
二人で始めた交換日記
緑の表紙のタイトルに
あなたの瞳は潤んでいた

あなたを通して流れる時間が
何よりも大切で

心の会話は何回目?
「叶わない」「知ってるよ」

手を伸ばせば届きそう
それはきっと、夏の雲と同じなんだ


ねぇ、覚えていますか
最初のお題は未来予想
医者に、画家に、作曲家
あなたの描く将来は
取り留めもなく輝いていた

あなたを通して感じた明日が
何よりも楽しくて

心の会話は何回目?
「敵わない」「知ってるよ」

手を伸ばせば届きそう
それはきっと、夏の雲と同じなんだ


ねぇ、覚えてますか?
交換日記に挟んだ想い
私、知っていました
私のページを見ていないこと


でも、それでも良かった
あなたと同じ時間にいたことが
何よりも嬉しくて
苦しくて
楽しくて
辛かった


交換日記の最後のページ
すぐに文章が思いつかなくて
代わりに絵を描きました
紫色の、綺麗なシオン


静かな教室、揺れるカーテン
見下ろす校庭に並ぶ二つの影
揺れる視界に背を向けて
私はノートを閉じました