恩田陸『ドミノ』

 今回は、恩田陸の『ドミノ』を読んだ感想について書きたいと思います。

あらすじ

 1億円の契約書を待つ締め切り直前のオフィス、下剤を盛られた子役、別れを画策する青年実業家、待ち合わせ場所に行き着けない老人、警察のOBたち、それに…。真夏の東京駅、28人の登場人物はそれぞれに、何かが起きるのを待っていた。迫りくるタイムリミット、もつれあう人々、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが倒れてゆく!抱腹絶倒、スピード感溢れるパニックコメディの大傑作!! (裏表紙より)

本を手に取り本分を読み始めるまで

 (書店の店員としてどうかと思うが、)これまで、食わず嫌いならぬ読まず嫌いをしていたため、恩田陸の小説を一度も読んだことがなかった。書店の日々の業務の中でお互いの好きな作家さんや最近おもしろかった本などを教え合い、そこで初めて読む作家さんやジャンルも多く、『ドミノ』もその例外ではなかった。自分の大切な人におすすめしてもらった一冊として楽しみにしていた。

 しかし、表紙を捲って僕は面食らった。目次よりも序文よりも先に目に飛び込んできたのは、28人もの登場人物の名前と簡単な紹介文、そして、東京駅の構内図であった。28人は多すぎる、覚えられない、との思いですぐに本を閉じようとしたのだが、折角教えてもらった作品だから最後まで一通り読まなくては…という強迫観念に駆られて読み進めていった。

感想

 最後まで読み切った今では、本当にすごい、というより他ない。先でも触れたが、読むのをやめたくなるような登場人物の多さが気にならないようになってくるのである。物語中盤ほどまで、28人分の別個のストーリーが少しずつ展開されていたのにも関わらず、どんどん28人が絡まっていき、誰もが主役級の展開をしながら話が進んでいく。28の点が次々と次はどうなるの?というような先がとても気になるような楽しさを得ることができた作品だった。

 「恩田陸は伏線の回収がとても上手いのと、とても読む気にさせるんだよ。」とのことだったが、本当にそのとおりであった。カルピスのくだりのような、1/28のストーリーの余談の部分が一番のヤマで出てきたたり、もう絶対出ないでしょ、という登場人物が後ろの方で登場してみたり。そして、今回は短編だったこともあるが、とても話がすらすらと場面ごとにぶつ切りで展開されていたので、先先進みつつ、必要なところになると最初のページに戻ってみたり、その人の前の話を読んでみたり、というように、一冊を最後まで分かりやすく且つ堪能できるように、そしてスピーディーに読ませる工夫が凝らされていたように感じた。最後まで読み切ることで、しっかりと良さが分かるような作品だった。

 ただ、物語の結びの何章分かが少し納得いかなかったような感じがした。あれだけ山場の部分でのドミノ倒しが上手くいってたのにも関わらず、放り投げられたかのような感覚…???上手く言えないけどもなんかあっさり終わりすぎて、もう少し…というような気もしたが、総じて面白かったのでいいかな。

 続編も出ていて、次の舞台は上海。よりスケールアップしているんじゃないかと期待が高まるばかり…!!!

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