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キャリアチェンジしても顧客に選ばれ続けるための秘訣

クライアント様とお話しするとき、常に意識していることがあります。

それは、「もし相手が理解できないときは、自分の説明の仕方に問題があると捉える」ということです。


たとえば、

「ニーサは運用益が非課税になる制度です。」

というように説明したとき、人によって理解の程度はまちまちです。

投資の知識や経験が少ない人であれば、「なんのことがわからない」という反応もありえます。

そういうときは、次のように順を追って説明します。

「投資をしたときに得られる利益のことを、運用益といいます。」

「運用益には、一定の税金がかかるのが通常のルールです。」

「ニーサを利用して投資をすると、運用益にかかる税金を払わなくてよい、という優遇を受けることができます。」

同じように説明しているつもりでも、相手の事前知識によって伝わり方は異なりますので、そこを確認しながら話す内容を調整していきます。


「相手に合わせて説明するなんて、あたり前では?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、専門家であるほど、素人の気持ちに寄り添って考えることができないということもあるのではないでしょうか?

専門的な知識をわかりやすく伝える技術を持つこと、それ以前に伝える努力ができることは、顧客に選ばれるためにとても重要であると私は考えています。


わかりやすい説明をするために大切なのは、「理解できないのを絶対に相手のせいにしない」ということ。

自分の説明の仕方に問題があると捉えて、クライアント様にもそのことを伝えています。


セミナーでの学び

若いころの私は、今のようには考えていませんでした。

仕事でお客様に説明していて、「なんでこんなことも分からないんだろう?」と思うこともありました。

それが今の考えに至ったのは、会社員時代に参加したあるセミナーがきっかけでした。


現在の私はフリーランスでFPをやっていますが、ほんの3年前まではまったく異業種の会社員でした。

前職の業種は「受託分析サービス」という、一般にはあまり馴染みのない仕事をしていました。

科学的な専門知識をもって測定・観察・分析することで、さまざまな製品の開発や製造を支援するのが、受託分析サービスの業務内容です。

この仕事の生命線は「正確な分析データを出すこと」であり、一度でも間違った結果を提供したら、顧客の信頼を大きく損ねてしまいます。


このような仕事に従事している技術者は、正確なデータを出すことにこだわるあまり、顧客への説明をおろそかにしてしまうことがあります。

なかには、「正確なデータを出すことが自分の仕事。それをどう扱ったり解釈するかは顧客次第」と割り切って考える人もいます。

若いころの私にも、そんな考えが少しはありました。


それが大きく変わったのは、ある技術セミナーにいったときのこと。

講演者の一人が、こんなことをおっしゃいました。

「私はいつも、職員に対してこのように指導しています。」

「分析技術者の仕事は、データを出すことではない。相手にそのデータの意味を分かってもらうところまでが仕事なんだよ、と。」


この話しを聞いて、当時の私は衝撃を受け、「顧客に理解してもらう配慮が足りていなかった」とそれまでの自分の行動を反省しました。

それ以来、レポートを書くときは平易で読みやすい表現にしたり、説明するときは相手の事前知識に合わせて言葉を選んだりと、工夫するようになりました。

そして、キャリアを重ねるにつれて「前野さんに相談したい」と言ってくださるお客様が増えていったのです。


キャリアチェンジしても使えた「説明する力」

このような会社員時代の経験が、いまの仕事にそのまま活かせていると感じます。

科学を専門とする会社員から、家計管理を専門とするフリーランスへと、大きく転身したけれども、、、

専門的なことを、専門外の人が理解しやすいように嚙み砕いて説明する

という、仕事の核となる部分は変わっていないのです。

この「伝える技術」こそ、私がキャリアのなかで培ってきたポータブルスキル(持ち運びできるスキル)なのでしょうね。


家計管理や資産形成のご相談をいただくなかで、クライアント様から「わかりやすいです」と仰っていただけたとき、「今までやってきたことは無駄じゃなかったな」と感じます。

ストアカで開催している講座は、始めてから3年弱で受講者数が延べ600名超、開催数が500回超となりました。


FPとして何の実績もない私が、ここまで到達できた理由を一つ上げるなら、、、

「相手が理解できないのは、自分の説明が下手だから」と常に考え続けてきたこと。

その結果として、受講者の「理解できて嬉しい!」とか、「自分にもできそう!」という前向きな気持ちを引き出すことができたからなのかなと思います。


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