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ジャニーズ問題と独占禁止法

 2023年は、ジャニーズ事務所の性加害問題でマスコミ含めて、様々な角度で議論がされているが、叩くだけ、そして、特殊事例として議論されることが多くなってきたように思える。メディアは、今回もただ単に、叩くだけ叩いて時のネタとして視聴率やPVを稼ぎにかかるのだろうが、もう少し、未来志向な時間の過ごし方ができないかと思い、筆を執ってみた。

 今回の問題は、良いも悪いも昭和に作られた秀逸なビジネスモデルの一部が、現代に適用できなくなり、問題として浮上したものの一つでもあると思う。特に、芸能界、広告業界、興行に関わる世界は、昭和の商習慣がしっかり残っている。ようやくそこに光が当たったのだと。しかし、これは、芸能界にある特殊事例ではないと、同時に思う。どちらかというと、どの業界、どの組織、どの日常生活にも潜む構造的な問題ではないかと。そして、そう我々が捉えることで、閉塞感のある現代社会の”とば口”になるような気がするので、他山の石としてこの問題を捉えていこう。

我々にも潜むこの問題のキーワードは、

 バターだ!。。。いや”バーター”だ!

すみません、、、そう、「バーター取引」。法律用語では、「拘束条件付取引」。公正取引委員会のサイトはもちろん、日本の法律では、1982年(昭和57年)に明示的に禁止されている取引行為。

不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)

 私も広告業界の端っこに居た身としては、日々、バーターって言葉はそこかしこで使われていた記憶がある。芸能会に限らず、ビジネスの世界において、人情や仁義、貸し借りが潤滑油となって、複雑に入り組んだ問題を円滑に進めることが往々にしてある。定性的な評価やそもそも水物な興行から発展した芸能界は、特に色濃く、人情味あふれる関係で様々な番組や制作物が作らているのも事実。不確定要素が多い世界では、バーターというツールはとっても便利なものなのである。

 しかし、バーターが恒常化・固定化することで、その後作られる番組や商品は、取引者同士のニーズは解消されるが、市場ニーズとは合致しないことが出てくる。なぜなら、その取引自体が、該当制作物に資することを考慮していないから。今回のジャニーズ事務所問題は、犯罪行為自体の議論は、迅速に整理されてほしいが、この問題を見知っ日本のマスコミ、芸能界、広告業界、寡占が進んでいる業界、例えば、小売流通(スーパーの棚取り合戦)などに従事している我々ビジネスパーソンにとっては、「バーター」という名のものとに行われている商取引を見直す機会に利用するといいのではないかと思う。

「〇〇ちゃんブッキングするから、新人の△△つかってよ~」
「主力の××資材売ってあげるから、今月の注力商品◇◇も買ってよ~」
「☆☆ドリンク、御社シェア上げるから、在庫気味な▼▼もよろしくね」

 商売をしていると、売上や利益を追求するあまり、企業総体で取引交渉をしてしまうのは、商売人の性。しかし、行き過ぎたり、ましてや恒常的な取引になっていくと、そのイレギュラーな取引はいつしか日常になりその日常になった上に新しいイレギュラーが積みあがって、引くに引けない関係になっていくのではないかと思う。

 ジャニーズ事務所問題を眺めていると、自分の身近に潜む「バーター取引」が、日本社会に潜んでいる大きな病巣なのではと、ふと思う今日この頃でした。

参考資料:

出典:競争政策研究センター

競争政策研究センターとは、
公正取引委員会傘下で、所長・主任研究官・客員研究員として独占禁止法や経済学等の専門家等の参画を得て,研究活動を行うほか,各種セミナー等を開催することによって,中長期的観点から,独占禁止法の運用や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化する組織。

参考:https://judgit.net/projects/13011

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