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2017年9月の記事一覧

レ・パピエシアン奈良吟行

私の胸のあたりに一輪の花が彫られた柱を過ぎる
草花の彫刻のある天井は手の届かない場所の真白さ
ところどこに窪みのような仏像が法華説相図の中に座しおり

クリーム色の壁の塗料の凸凹が見上げるなかに点々とある
仏像の指かけていて断面にかそけき木目を露わにしおり
十一の顔を備える仏像の怒りの眼と目があっている
松の葉をわずかに浴びて秋の鹿は前足で土掘り返しゆく

学生短歌バトル2017(龍谷大学)

角川学生短歌バトルに出場を決意するも、予選敗退。正直言って悔しいです。これに私の、龍谷大学文芸部詩歌有志としての活動はおしまいです。ありがとうございました。
詩歌有志って最初は、僕が俳句やりたい為だけに作ったんですよ。なのに、僕が俳句をお休みして短歌を始めたりして。なのに後輩たちは付いてきてくれて。なんだかんだで僕が作って僕が振り回して、というしっちゃかめっちゃかな集団にしてしまいました。みんな、

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瞳に眠る

(三重県歌人クラブ作品賞受賞作)

俯いた少年の背にかすかなる起伏が生まれているまひるまに
遊戯室壁一面の鳥たちのなかの一羽が影の黒さを
少女・聖ジュヌヴィエーヴの祈りへと薄いピンクの色をこぼした
真っ直ぐに老いていくことモンティセリの女は大樹のたもとに立って
アングランのセーヌの川のかたすみが街の緋色をかすかに映す
ひまわりのような晩年 肉体の前に朽ちゆく魂がある
夕暮れに積み上げられた大粒の葡

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