レ・パピエシアン奈良吟行

私の胸のあたりに一輪の花が彫られた柱を過ぎる
草花の彫刻のある天井は手の届かない場所の真白さ
ところどこに窪みのような仏像が法華説相図の中に座しおり

クリーム色の壁の塗料の凸凹が見上げるなかに点々とある
仏像の指かけていて断面にかそけき木目を露わにしおり
十一の顔を備える仏像の怒りの眼と目があっている
松の葉をわずかに浴びて秋の鹿は前足で土掘り返しゆく

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