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さあ旅に出よう【追悼・安野光雅さん】

絵本作家の安野光雅さんがお亡くなりになった。

思えば、私が初めて感銘を受けた絵本は、安野光雅さんの代表作、『旅の絵本』だ。

幼稚園卒園まで住んでいたアパートの大家さんは、幼い私を大変可愛がってくださり、自宅にもよくお招きいただいた。

その本棚に、『旅の絵本』はあった。

それまで読んでもらい、また自分で読んだ絵本とは全く違う世界。

そこにあるのは絵だけ。

ト書きもセリフもない。

なんなら、旅人がどこにいるかも探さなきゃいけない。
(『ウォーリーをさがせ!』を初めて見た時、「『旅の絵本』を“うるさく”した感じだ!」って思った笑)

それなのに、街中の描写は、雑踏や歓声、人々の営みや交わりが賑やかな音として伝わってくるようだった。

草原や山などの自然の風景では、風の音や手触りが直に、爽やかに感じられるようだった。

絵に臨場感があった。
絵に説得力があった。
そして、あの絵本には、間違いなく音が溢れていた。

絵本を開く度に、描かれる旅人と一緒に旅に出ていた。

『旅の絵本』は、大家さんに可愛がってもらった幼少期の静かな幸せと一緒に、優しく心に刻まれている。

残念ながら、今手元には『旅の絵本』はない。

でも、絵本に心を寄せるきっかけを作ってくれたのは、間違いなくこの本だった。

安野光雅さんの訃報に触れ、改めて旅に出たいと思った。

『旅の絵本』を開くと始まる、あの素敵な世界へ。

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