寿限無の和尚

落語「寿限無」で和尚さんが名付けをする場面を、和尚さんのセリフと心の声だけでお届けします。

〜〜〜〜

「これはこれはお久しぶりで。どうなさいました」

「おぉ!それはめでたい。して、名は何としましたか」

「私に名付けを。それはそれは。して、どのような名がよろしいかな?」

「ほうほう、長生きということであれば、鶴は千年と言いますから、鶴太郎、鶴丸などは、いかがかな」

(千年じゃ短い?)
「あ〜、では、亀は万年で、亀吉、亀之助などはいかがかな?」

(万年でも短い?うーん)
「お、寿限無というのはどうじゃな?」

(ぷぷ笑、毛虫って笑)
「寿、限り無し、いつまでも長生きという意味じゃよ」

(他?そんなすぐには思いつかんぞ。うーん)
(思い付くまで小話でもするかの)
「“五劫の擦り切れ”という話があってだな」

「いやいや、三千年に一度、天から天女が舞い降りて、岩を擦る。この岩が擦り切れてなくなるが一劫。これが五つだからな、とてつもなく長い」

(あー、これわかってないな)
「海砂利水魚と言ってな」

(化け物って、あぁ、まあ化け物ぽいか)
「いやいや、海の砂利と魚の数には限りがないということでな」

(お、ちょっと名前っぽいのきた)
「水行末、雲来末、風来末などはどうじゃ」

(胃薬⁉︎どうしてそうなる?)
「水の流れて行く末、雲来たりて行く末、風の来たりて行く末には限りがない」

(まだ?うーん、思いつかんけど、黙っているのもよろしくないな)
「食う寝るところに住むところ。生きていく上で欠かせないものじゃ」
(名付けと関係ないな笑)

「藪ら柑子のぶら柑子と言ってな、生命力の豊かな縁起の良い木がある」

(まずいな、いい名が思いつかん)
(一つ作り話でも)
「昔の唐土にパイポという国があってな、その国のシューリンガンという王様とグーリンダイというお妃の間にポンポコピーとポンポコナというお姫様がおって、みんなたいそう長生きだったそうじゃ」

(お、いい名を思いついた)
「長く久しい命と書いて長久命、長き助けと書いて長助、このあたりでどうじゃな」

(はぁ、やっと納得したわい)
「じゃあ書いておくからな、いいものを選びなさい。え⁉︎それも書くのかの?まぁよい。話したことは全部書いておこうかの」
(まあ、寿限無か長久命か長助か、そのあたりじゃろう)

〜数日後〜
「え⁉︎あれを全部名とした?」
(うわぁ〜、あいつないわぁ〜)

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