ある受刑囚の手記10
子供たちとの話を続ける。
軽く触れるだけのつもりだったが、書いているうちに思い出してきたこともあって、思った以上に長くなりそうだ。
そうなるとやはり名前のないのは話しづらい。
以降便宜的に仮名をつけるがもちろん私が勝手にそう呼ぶだけで、彼ら彼女らの本当の名前は知りようがない。
今では高等科学校に進んでいるだろうか。
万万が一にも当人たちに迷惑の及ばないよう、あの国の命名法からは、できるだけかけ離れた名前にするつもりだ。
さしあたり、最初に私をテニスラケットで打ちすえた女の子はエリカとする。
そのエリカがやがて何かを思い付いたというような、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
私にもわかる数少ない現地語で、まだ私をあれこれと攻め立てていた仲間たちに、「待って」と呼び掛けた。
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