ある受刑囚の手記9
受刑者にとって子供は天敵のようなものだ。
大人なら見てみぬふりをする私たちのことを放っておいてはくれない。
小さな子供が私を指差して、そばにいる大人に何かを尋ねる姿を、何度も見た。
「あのお姉ちゃんはどうして裸なの?」とでも聞いているのだろう。
「あのお姉ちゃんはワンワンなの?」かもしれない。
聞かれた大人も答えに困るだろう。
見るんじゃありません、とでも言って手を引いていってくれればいいのだが、中には苦笑まじりにかはっきり侮蔑の色を浮かべながらか、なにがしかの説明をしてあげる親もいる。
そう聞かされた大概の子供は、あまり関わってはいけない存在なのだと理解するか、好奇心を刺激されたとしても、親の見ている手前それ以上深入りしようとはしない。
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