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堕ちた憧れ2

私はずっと后野先輩の味方でいる。
その決意に嘘はない。
とはいえ、先輩のために私が出来ることがあるはずもない。

幸い私は1年生部員たちの間ではまとめ役のようになっている。
みんなで先輩たちに、あるいは直接監督に意見しようと訴えてみたのだが、心咲はじめレギュラー入りが濃厚な面々がまったく賛同してくれず、頓挫した。
私のそんな動きは先輩たちも知るところとなり、何人かで私たちの部屋に押し掛けてくる騒ぎになった。
余計なことはするな。
去年のようなことはもうごめんだ。
口々にまくしたてられたのは、要はそういうことだった。

「それこそアリサを見てれば分かるでしょう。去年、監督に反抗した結果があれよ」
「だからって! 后野先輩にあんなことさせたままで本当にいいんですか!」
「あの娘が選んだことよ」
「それとも、あなたが彼女の代わりになるとでも言うつもり?」
頭に血がのぼっていたせいもあるだろう。
となりで心咲が制止しようとするのも構わず、後先考えない返事をしようとした。
その時だ。

「あ、ああぁ! イク、イクぅうう!」

あまりに唐突な后野先輩の声が響き渡って、全員一様に唖然となった。

「ちょっと、アリサ、何なのよ、もう!」
見れば、私たちの部屋からすぐそこの階段の上がり口あたり、アリサ先輩がへたりこんでいた。
例のグラビア写真みたいな格好。
きわどいレースのパンツは、何かを包み込んで大きくふくらみ、ブブブと振動し続けていた。
「ご、ごめん、あん! 監督にもらったバイブ試してたら、あんまりすごくってぇ。はぁん!」
しゃべりながらも、明らかに顔は上気し、腰はいやらしくくねらせている。

「そういうことはせめて部屋でやんなさいよね」
「部屋までもたなかったんだってばぁ」
「いいから一度止めなさいよ」
「やだー、止めたくなーい!」
「止めろっていうの!」
「ぶー」

不満顔になりながらも、パンツの中からそのグロテスクな代物を取り出してみせた。
そういうことにはまったく疎い私でも、何をかたどったものか、はっきり分かった。
手の中でまだグネグネうごめくそれを見せびらかす様に振り回し、多分自分のあそこの液なのだろう、あたりかまわず撒き散らしながら、后野先輩は去っていった。

その去り際、私の方へ目をやり、一瞬だけ真面目な顔を垣間見せた気がした。
本当にほんの一瞬ことだ。
すぐ、わざとのように音程を外した何かの替え歌を口ずさみだした。

♪わたしエッチなメス便器
♪いつもおまたはグチュグチュ

すっかり毒気を抜かれ、白けきった空気が場に流れた。
「と、とにかく」
咳払いをひとつして、羽柴先輩が沈黙を破った。
キャプテンと言いながらとにかく押しの弱い人で、ここまで他の先輩たちの剣幕におろおろするばかりだった。
「チームの状態は上向いてきてるところなの。去年のあのゴタゴタがあって、私たちは相当出遅れてる。なんとかこのままの調子を維持したいのよ。お願い」

キャプテンとして、引退を目前にした3年生部員としては正論なのかもしれない。
だが、后野先輩の親友として、それでいいのか。

「アリサだってそれを望んでいるのよ。今の、分かったでしょ?」
私の内心を読んだように言う。
するとやはり、さっきの后野先輩の行動は私を守るためだったのだろうか。
「どうですかねぇ」
心底白けきったような声で、心咲が言った。
「あのあえぎっぷり、演技とも見えませんでしたよ」
「心咲!」
「とにかく、カナにはあたしからもよく言っておきます。それでもういいでしょ、先輩がた?」
心咲のその態度が幾人かの先輩たちの気にさわったようではあったけれど、やはりさっきの后野先輩のインパクトの方がまさった。
ぶつぶつと何かこぼしあいながら、引き上げていった。

「分かったろ」
先輩たちを見送り、ドアを閉めるなり心咲は言った。
「なにがよ」
「ひとつ、先輩たちに、ビッチさんを助けようなんてつもりはもうない」
もう先輩ともつけずのビッチ呼ばわりだった。
それに噛みつこうとする私を制して。
「ふたつ、ビッチさんはもうあんたの憧れたあの人じゃない」
「そんな! 今だって私のために」
「まあ、見事なタイミングではあったかもしれないね。なら、そうまでして止めてくれたあの人の気持ちを無駄にするの?」
「そ、それは」
「カナ」
長いつきあいになる心咲だけど、試合以外でそんな真剣な声になることは滅多になかった。
私もさすがに息を飲んだ。
「なんか、イヤな予感がするんだよ。頼むからあの先輩にはもう関わらないで」

その時、ふたりのスマホが同時にそれぞれの音で着信を伝えた。
部員グループチャットを使った、后野先輩の呼び出しだった。

その夜の配信では、后野先輩は例の玩具を何本もとっかえひっかえして、自分の股間とお尻へ突っ込んでみせた。
「お、おおぅ、この極太くんはさすがに、ん、ビッチ・アリサさんのゆるま✕こでもきついか、ん、んん、は、入ったぁ! 見て見て、すごくね、本当にあのぶっといのくわえこんじゃったよぉ、うぎぃい!」

♪わたし愉快なメス便器
♪今日もアンアンイキまくり
♪わたし楽しいメス便器
♪前と後ろでズコバコ

あの妙な替え歌も歌いながら、何度も何度も果ててみせた。

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