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実家のトイレが大理石だったら

まずはじめに書いておくけれど、私はお金持ちじゃないし、この記事にオチはない。

岡村靖幸さんの曲で『愛はおしゃれじゃない』という曲があるのをご存知だろうか。


あ、ただ私が好きなだけです。


話を戻すと、私は『お金持ち』じゃない。
家賃を払えて、食費を払えて、光熱費を払えて、保険料を払えて、年金を...とかまあ色々あるけれど、何とか暮らしている風の谷の民である。

プラスサイズモデルを始めたころ、
「ぶっちゃけ毎月のギャラいくら?これぐらい?」
と聞かれたことがあるけれど、その人の提示した額のはるか下、地球規模で例えると、反対側のマントルを通過したあたり、ブラジルの手前ら辺だったと思う。

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その頃に比べたら、今はまぁ外核ぐらいかもしれない、でもまだブラジルの方が近い。

そもそも、日本ではプラスサイズモデルの仕事というのはまだ少ないし、私以外にもモデルがいるので、選ばれなければ仕事はないし、うまく出来なければ次がない仕事でもある。
何度も辞めようかなと思った事もあるけれど、収入だけがやる理由じゃない。そしてモデル以外にも時々オフィスワークの仕事をやっている。
(最近はコラムを書く仕事も頂いたりして、もともと文章を書くことは好きだったのでとても嬉しい。)

昔はキュア会社員として何年間も毎日満員電車に揺られていた日々もあるが、いまは風の谷の民として風を読み風と共に暮らしている。

そんな風の谷の私が今一緒に暮らしているのが、西の果ての国からきたアシタカである。アシタカは故郷から遥か遠い異国の地、この日出る国ジャポンでキュア会社員として地球を救っている。

そのアシタカとの交際が先月2周年になり、お祝いでフレンチレストランに行ったのだった。

風の谷では食べられないような、でっかいお皿にちょこんと美しく載せられた美味しい料理のフルコースが食べられるレストランだ。
お料理が運ばれるたび説明もしてもらえるけれど、突然のスコールが通り過ぎた時のように右から来たものを左へ受け流してしまい、
「これ何のソースだっけ?」「なんかわからんけど美味しいよ!」
とあとで小声で聞きあったり
「バゲットが最高に美味しい、ジップロック持ってくるんだった」
と絶賛したりしていた。

記念日のお祝いとして、年に1回か2回あるか無いかぐらいの、私たちにとっては贅沢な時間だ。

そんなひととき、隣のテーブルの話し声が聞こえてきた。
内容は割愛するけれど、聞き耳を立てなくても聞こえてきてしまうその会話の声に圧倒されてしまって、沈黙していると、どんどんその声の意識が私の中に入り込んでくるようだった。
何か会話をしなければ、と私は昨日Netflixで初めて観たスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』の話をした。

ちょっとネタバレになってしまうのだけれど、このシャイニングでは、『あちらの世界』と『こちらの世界』が出てくる。
私はそういったテーマの作品が好きで、観賞後に考察記事などを読んで、それも踏まえて自分の感想をアシタカに話した。
アシタカ的には、今見るとそんなにビックリする演出じゃ無かったけど、その後の色々な作品がオマージュしてるよね、という話だった。

一通り話して、トイレに立った。

レストランの、高そうな大理石の壁や床に囲まれたトイレで、ふと思った。

『実家のトイレが大理石の家に生まれていたら、どうだったんだろう』
と。

そもそもトイレが大理石だったら、大理石の貴重さにも気づかないし、東京で1Kのアパートとかを探して行った先のトイレに「なんだこのトイレ!」「え、お風呂と一緒なの!?」「むしろシャワーがあるとトイレ丸ごと掃除しやすいってまじか」と愕然とするかもしれない。
いやまて、実家のトイレが大理石なら、1Kのアパートとか探すことなんて無いのかな?とも思った。

それでこういったフレンチレストランにも当たり前に食事に来れて、冗談で次来る時はジップロック持ってこようとか話をするよりも、私にとってのサイゼやガストみたいに、日常の愚痴を話す場所になるのかな、と。

いやいや、いくら実家が大理石のトイレでも、やっぱり本人がどう生きるかで人生が変わるはずだとも思ったし、映画『パラサイト』のことも思った。

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自分でめちゃくちゃ働いて、稼いで、資産力を高めて、トイレを大理石にする人ももちろんいると思うけれど、私の想像したことは
実家のトイレが大理石なのが当たり前の人生だったら?
という話だった。

その後しばらく色々モヤモヤと考えて、この記事を書いていたら、背後にいたアシタカが何について書いているのかとたずねてきた。
そして"大理石のトイレの話"を話した。

するとアシタカは笑った。


「トイレだけ大理石の家だったりして!?
トイレ以外はボロボロの家!あはは!!!」

今日もまた、私はアシタカに救われている。


・・・・オチありました。




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