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私の楽しみ

夕べ、一日の仕事が終わって車で家に戻る途中。

ぼんやりとした頭で店のことを振り返ると、子供がクレヨンで描いたような、色とりどりのお花畑しか浮かんでこなくて ひとりクスクス笑いが止まりませんでした。

新しく雇ったスタッフのせいです。

店内営業をするために、新たにスタッフを7人雇ったのです。ダイニングに入ってきたのは16歳から20歳までの若い女の子たち。皆んな年齢よりもしっかりしていて頼もしく、エネルギーも軽やかです。 
メキシコ人、黒人、白人、それぞれのバックグラウンドと、個性鮮やかなパーソナリティが、お花畑のイメージを私の一日の終わりに彷彿させるのです。

作業ステーションでドリンクやサラダ、みそ汁を用意する間に、スパークリングワインの泡立ちのような笑い声、子供じみたおしゃべりが現れ、そしてまた、表情を戻してお客様のところへと戻ります。

彼女たちが仕事を覚えていくまでに、様々な失敗の体験はつきものです。けれど、仕事を覚えて、それを自分のものにしてゆく様は、まるでつぼみが花を広げていくかのようです。

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エマは15年前に、17歳でアルバイトとして入ってきました。高校を卒業してからはフルタイムで 10年もダイニングのスーパーバイザーとして働いてくれたのです。その間にパートナーを見つけ、子供も生まれました。現在は写真や記事を地元の新聞社に書いたり、ワイナリーで働いたり、好奇心たっぷりに様々なことに挑戦していますが 今だ、店にも週三日は来てくれています。 


彼女が店で働き始めた頃はシャイで少しおどおどした女の子でした。みそ汁をこぼして手に火傷を負っても、誰にも言えず、我慢していたような子です。だからこそ、人ときちんとコミュニケーションできるようになりたい、とあえて接客業を選んだようでした。

彼女が、次第に自分に自信をつけていき、堂々とお客様のおもてなしをし、問題が起こっても笑顔で対処できるようになっていく様子を ずっと見てこれたのは私にとっても喜びでした。
人が仕事を通して成長していくのを見るのは私にとって、こんなに楽しいことなんだ、と思わせてくれたのです。

夕べはお店のサーバーとして始めた、本業は大学生のサラが、
「今日の二人組の女性客、おなかが空いてたのか、来た時にはすごく機嫌が悪かったのよ。でも、店を出るときには笑顔がいっぱいだったの!」と報告してくれたました。勝利のガッツポーズです。
先週は、21%アルコールが入っている菊水のにごり酒を、サッポロビールと一緒に飲んでいた女性客から、食事についてクレームをつけられても、笑顔で対応していた彼女。(もちろん、気づいてすぐに助っ人に入りました)。


レストランの仕事は毎日同じことの繰り返しのようですが、色々な人、色々なカルチャーの人が来る、様々なシチュエーションがある、ということで、同じではありません。一つ一つのテーブルでは、まさにそれぞれのセッティングの上でストーリーが繰り広げられているのです。

毎日の体験を経て、個人のペースはありますが、次第に自信をもって、臨機応変に動いていけるようになっていく彼女たちを、私は時にじれったく、時に感嘆の思いで見ています。私にできることは、土壌(仕事環境)を整え、毎日のお日様とお水(コミュニケーションやとフォローアップ)を注ぐことでしょうか。

店内営業を始めて、お店は今、人がどんどん育っていっています。


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