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今、この瞬間と友達になれば、自分をがっかりさせることはなくなるよ。

先日、仕事をリタイアした友人のお祝いに、一緒に食事をした。

彼女は、ボイスセラピストで、病気などで声を出すことができない、子供たちにセラピーをずっと施してきた。彼女の専門は、この界隈では貴重で、彼女はいつも忙しそうだった。

10年ほど前のことを思い出す。

雨の日、仕事帰りの彼女が歩いているのを、私の店の前で見つけた。
ドアを開けて、声をかけると、オレンジ色の傘の下の彼女の顔は、とても疲れていた。

その日、特別に嫌なことでもあったのか、彼女は、

「ずっと自分の仕事について疑問を持っていたの、
本当にこれが自分の仕事なのかどうか、わからなくて」。

目を伏せて、そんなことを口にした。

彼女は見えない世界に敏感で、それを活かして、休みの日には、ヒーリングやリーディングのセッションをし、クラスを持ったりすることもあった。ひと時は、仕事をやめてスピリチュアルの聖地として有名な、北カリフォルニア、シャスタ山のふもとに生活を移したこともあった。

でも、不思議なことに彼女の人生は、いつも彼女をボイスセラピストという職業に連れ戻していた。

彼女は、そのテクニックと、彼女の持つ忍耐強さ、優しさ、思慮深さで、多くの子供たちを癒してきた。だから世界は彼女をそのポジションに、必要としているんだ、と私はそばで彼女を見ていて思ったものだった。

彼女の癒しの力は、そこで最大限に発揮されていた。

「あの頃はね、世界中の聖地を訪ね歩きたいと思っていたのよ、もっと自分の生活に、神秘的で、ドラマチックなことを期待していたのかしらね。」
と笑う。

私から見たら、ひとりの子供の声が出る過程は
よほどドラマチックだと思った。

けれど、そんなある日、彼女は自分のアカシックレコードを読む機会があった。(アカシックレコード=元始からのすべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶の概念)

そこで、ボイスセラピストという職業が、彼女の仕事であると記されているのを知ったとき、不思議と納得して、前に進むことができたようだった。

思い出を懐かしみながら、今の彼女は、これまでやり遂げてきたことに満足しているのが感じられた。笑顔がいつにも増して、輝いていた。

そういえば私にも覚えがある。

夫が始めたこの商売から、私はいつ手を引こうかとずっと考えていた。

そもそも、彼がレストランを始めたい、と言い出したとき、子供たちはまだ小さくて、末娘は4歳だった。
家族みんなで晩ごはんを囲めない仕事は嫌だ、と反対したのに、「町の人、皆んなが家族と思えばいいよ」と、宇宙的なことを言い出して、彼は後に引かなかった。

商売が私の暮らしの大きな部分を占め初めても、私は、夫を手伝っているだけ、そういう感覚が抜けなかった。そんな借り物の仕事をしている感覚が、5年もあった。

だからといって、何か自分がやりたいことがあるわけではなかった。けれど、いつか、私はこれが自分の仕事だ、と思えるものに出会えるはずだと信じて、その日を待ちわびていた。

それがある日、あの頃、日課としていた瞑想中にふと、

「なんだ、今の仕事が私の仕事。夫の店じゃない、私の店でもあるんだ」

と、腑に落ちてしまった瞬間があった。
不思議だけど、
ストン、とそのことが分かって、私はいとも簡単に、せいせいした気分になったんだ。

「これじゃない」
と思っている間は、現状にあらがっている状態だから、なかなか前へは進めない。

今ある現状に「YES」と言える自分でいるときだけ、私たちは今を活き活きと、素直に生きていけるのだと思った。

それでも、「YES」と、とても言い難い状況であれば?

今いる場所で、最高のものを探し出してみる。
どんなところにも、小さな利なるものが隠れているはずだから、そこにフォーカスを当ててみる。
さらに、その状況が、自分にどんなレッスンを与えてくれているのか、その恩恵について考えてみる。

そういったことが、あなたの「YES」を引き出してくれるかもしれない。

でなければ、私たちはいつまでたっても、現状に物足りなさを感じ続けることになってしまう。そんなふうに私たちは、決して自分自身をがっかりさせながら生きてはいけない、ということを、自覚しているだろうか?


「ニュー・アース」を書いたエックハルト・トールは、彼の教えのエッセンスを一言で表す言葉として、
「今のこの瞬間と、友達になる」、と言っている。

どんな「今」もまるで自分が招待した友人であるかのように、接しなさいと。

積極的に、「今」を迎え入れることで、私たちは状況の被害者になることなく、自分をがっかりさせることもなくなるはず。

そして、人生にあらがうことなく、人生の流れを流れさせてみれば、
そこには、我慢や忍耐とはまったく違う次元が現れて、多くの満足を与えてくれる。

リタイア後の友人は、これから何に「YES」と言っていくのだろう?



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