「なおぽん」が生まれた日
ここに二つの書影がある。
似ている。
平仮名で「みたい」と、入っているし。
あのとき、私は間違えて本を買った。
そして、それが全ての始まりだった。
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2018年にTwitterを始めたきっかけは、堀江貴文氏の「Twitterでシャワーのように情報を浴びる」という言葉だった。
早速アプリをインストールするも、問題は「名前」だった。
私は「名づけ」が致命的に苦手だ。
アカウント名やRPGゲームの主人公の名前に、1週間は悩む。
こだわりが強いというより、考えがまとまらない。
そんな私の常套手段が「拝借」だ。
長男の名前は、同時に生まれた某国王子からとった。
次男は、男の子ランキングで連続1位の名前を採用した。
息子の名前すらよく考えない私は、堀江氏のニックネームを拝借することにした。
ホリエモンは、アカウントやペンネーム等では「たかぽん」を自称している。
こうして「なおぽん」が生まれた。
「なおぽん」は、情報のシャワーへの期待に胸を膨らませ、Twitterワールドに踏み込んだ。
しかし。
タイムラインをどう追うのか、「ルール」がわからない。面白みもわからない。
このシャワー、私には合わない。
生まれてすぐ、「なおぽん」は放置された。
時は流れて20XX年、家庭は核の炎に包まれ破滅の道を進み、気づけば一人荒野に佇むシングルマザーとなっていた。
世界の終わりも、家庭の終わりも、いつだって突然だ。
二人の未就学児たちが散らかしまくる荒廃した家庭。
そこにある日、導きの石板のような本が現れた。
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その日、私は友人に勧められた『投資家みたいに生きろ』を買いに、本屋へと向かった。
読書好きなのに、自分の本を買うなんて、久々のことだった。
子供たちの衣食住が最優先で、家計にそんな余裕はなかったのだ。
本屋の香りがふわりと誘惑する。
あれもこれもと欲しくなる前に、目的の本を買わないと。
そのとき、お目当ての『投資家みたいに生きろ』を見つける前に手にとってしまったのが、『読みたいことを、書けばいい。』だった。
ただ表紙が似ていた、からかもしれない。
でも、それだけではない。
どうしてもこの本に気持ちを惹きつけられた。
投資家みたいな生き方は断念して、レジに向かった。
読み始めて、糸井重里さんの本ではないのに気づいた。
作者のことすらよくわからない本を、なけなしの生活費を投じて買ってしまったのだ。
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「あなたはゴリラですか?」
大きな書体の、そんな文章で始まるこの本に夢中になった。
本で紹介されたネット上の文章もすべて読んだ。
英語に「セレンディピティ」という素敵な言葉がある。
あの日、本屋で起きたのは、まさにセレンディピティだった。
もっとこの著者の文章を読みたい。
どうすれば、もっとこの方の作品に触れることができるのか。
田中泰延さんはTwitterをやっている、と紹介されている。
あの「なおぽん」が放置されている、Twitterか。
久々にアプリを開き、早速、田中さんをフォローした。
まず、じっくりと観察した。
どうやら田中さんやそのご友人、そしてUGと呼ばれる「何者かわからないが妙な距離感で田中さんに絡みゆく人々」によって独特のコミュニティがつくられている。
仲間に入りたい。
しかし、見れば見るほどに、面白い人たちの集合体で、入り込む隙もない。そもそも、文章を書く、人様に読んで頂く、のは恐れ多い行為だ。
それをこの著者から学んだばかりなのだ。
「お前のそのくだらない言葉を 偉そうに 世界に発信するのか」
何か呟こうとして、サッと削除する日が続いた。
何かが怖かった。最初の一歩が踏み出せなかった。
ようやく、ある日の昼、思い切って呟いてみた。
このツイートをした直後のこと。
これで、私の人生が大きく変わった。
面白そうなアカウントを片っ端からフォローしていくと、怪しい石のアイコンも、じわじわとフォローされ始めた。
ゼロに近かったフォロワー数も、いつの間にか500を超えた。
ちょうど世の中は、人と人との関わりが閉ざされていた。
一方で、Twitterでは次々と繋がりが生まれていく。
「Twitterでの繋がり」といえば、フォローボタンひとつで消えるような簡単なものかもしれない。
でも、私の場合は違った。
気の合う人、子育てや環境で共感する人、同じ趣味を持つ人、そんな人達との間に、気がつけばネットを超えた本当の友情が生まれていった。
ついに昨年末には、イベント等を介して多くの人と直接出会うこともできた。
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適当につけた「なおぽん」という名前。石のアイコン。
何者でもない、まさにただの「転がる石」。
それは、もっとも私らしい名前だった。
コロコロと日々を送るうちに、私の想像を超えた場所へと転がり始め、最高の友人たちをもたらした。
一歩踏み出して、よかった。
Twitterは「書く喜び」も教えてくれた。
日々のつぶやきを重ねるのは楽しかった。
友人たちがnoteに綴る作品に刺激され、私も140文字より長い文章を書いてみたい、という思いが膨らんだ。
そして昨年12月、私はまた一歩、踏み出した。
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いつだって、人生は「一歩踏み出すべき」なのだ。
踏み出して、転がってみればいい。
Like a rolling stone.
2021年12月2日は、転がる石「なおぽん」の書き手としての誕生日になった。忘れられない日だ。
そして今日は、人間としての私の誕生日だ。
あの日のセレンディピティで、私は2つ目の誕生日を持つようになった。
この石、まだまだ、転がります。
皆さま、「なおぽん」を今後もよろしくお願いします。
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前回は、こちら。
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