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変わりたいのにずっと変われなかったわたしへ ①

今週と来週はインタビュー特集。
ヨガインストラクターの八木あずささんが語ってくれた、「ヨガで自分が変われるなんて思っていなかった。でも、少しずつ少しずつ、変わりつつある」という現在進行形のストーリーをお届けします。

あずささんは、わたしがRYT200を取得したYoga with Rio の卒業生で、現在はパーソナルレッスンや体質改善プログラムの指導も行うヨガ講師。
並行して、Yoga with Rio RYT300におけるRio淵江さんのアシスタントを務めたり、月額オンラインクラスのV.V.Yogaのインストラクターも担当しています。

八木あずささんのインスタグラム

わたしがRYT200のオンライン講座を受講中、あずささんはRioさんのアシスタントとして受講生たちの体の動きを毎日チェックしながら、的確なアドバイスを与えてくれた。その「人を見る力」と言語化能力に、わたしはひそかに注目していたのだった。

現在は、V.V.Yogaのレッスンで、週2、3回はオンラインで一緒にヨガをしている間柄。レッスン前後の雑談から垣間見える、自然体で飾らない人柄と、ベーシックでありながらもしっかり体の細かい部分にアプローチするフローレッスンの内容に魅力を感じている。

だから、あずささんがこのnoteマガジンを初月から読んでくださっていると知ったときは、とてもうれしかった。

インタビューしてみたい、と強く思ったのは、ある日のレッスン前の雑談の時間だった。あずささんが、数年前と現在の変化がわかる写真を画面越しに見せてくれたのである。

もともとすっきりとしたお顔立ちなので、一見、それほど大きく違うようには見えないが、ヨガを始める前は、体重が今より約20キロも重かったと聞いて驚いた。

左が過去最高体重だった頃。長男の産後は産前の体重より+20キロまで増えたという

「母乳育児へのこだわりが強いのに、長男がなかなかおっぱいを吸ってくれなくて……わたしはやせたいのにどんどん太る、一方、体重が増えてほしい子どもの方はなかなか増えない。何やってるんだろう、って悩みのループで、産後うつ状態でした。その後も2年おきに出産をくり返したので、自分の体をかまう意識なんてゼロ。育児ストレスから、夜、子どもたちを寝かしつけた後、テーブルにジャンクなお菓子をズラッと並べて、ジュースで流し込むように食べていたんです。体にいいわけないってわかっていても、やめられなくて。もちろん体型が出る服なんて着ないし、そもそも写真がほとんどない。たぶん自分の姿を見るのが嫌で、撮られないようにしていたんだと思う。でも、そうしないとあのころは生きていられなかったんだって、今やっと肯定できるようになりました」

笑いながらそう話すのを聞いたとき「そのあたり、もっと聞かせてほしい」と思ったのだ。


体型コンプレックスとプライドをこじらせて

あずささんは、兄と妹をもつ3人兄弟の真ん中として育った。

「お兄ちゃんがダウン症で、真ん中だけど、長女としてちゃんとしなくちゃって気持ちが幼いころからずっと強かったんです。
妹がとても体が細い子で、同じ親から生まれて、同じものを食べているのに、なんでわたしだけ太っているんだろうって悩みが、小学生ごろからずっとありました。年が近いせいで、双子に間違われることもあったけど、そのたびに『妹は細くてかわいいのに、お姉ちゃんは太ってる』って思われてるんじゃないか、なんてことをつねに気にしていました」

「人を見る癖」がついたのも、そのころ。
この人は自分をどう見ているのか。
この人に好きになってもらうにはどう振る舞えばいいだろう。
そんなことばかり考えていたという。

いつもとりつくろって、本当の自分なんてなかった。人に羨まれるような人生を歩まないといけないんじゃないか、でも自分に自信なんてない。それでいて、プライドはあるんです。体型コンプレックスから、容姿への執着心がとにかく強くて、大人になったらやせるかなって思ってたのにやせないし、コンプレックスは結婚しても変わらなかった。今でも完全になくなったわけじゃないです」

結婚は20代半ば。結婚願望が強かったのは、実家から早く自立したかったから、と振り返る。

「家庭環境がよくなかったわけではないけれど、自分ならこういう家庭を築きたい、という理想があって、早く家から出たかった。夫婦とも3人きょうだいで育ったから、子どもは3人は欲しいって思っていたけど、まさか4人、それも全員男の子とは(笑)」

現在は、中1、小5、小3、小1を育てる忙しいママとして充実した日々を送っている。

子どもは4人、全員男の子

やせたい一心でコロナ禍で始めたヨガ


あずささんがヨガを始めたのは、「それしか選択肢がなかった」という、意外にも消極的な理由から。

「コロナ禍で、通っていたジムが閉鎖になっちゃって。せっかく落とした体重がまた戻ってしまう怖さから、何かしないと、と焦っていたところに、RYT200を取ってヨガを教えているママ友がいて、レッスンを受けてみることにしました」

ヨガはゆったり動いているように見えるのに、実はしっかり筋力を使うことがわかり、これはやせられるかも、と興味が沸いた。

「そのころも体型コンプレックスは相変わらずで、とにかくやせたい一心。ヨガって、モデルさんみたいに細くてきれいな人がやるものというイメージがあって、ピタピタのレギンスをはくことにも抵抗があったけれど、Rio(淵江)さんの体験レッスンを受けてみたら、『これは体を変えられるかもしれない』って思えたんです。体が硬くて、とくに股関節の柔軟性が全然なかったのに、体験レッスンでRioさんから少しアドバイスをもらっただけで、前屈がぐっと深まった。Rioさんの体の知識もすごいって思ったし、体ってちょっとしたことで変わるんだ、と。それでオンラインの朝活RYT200の2期、3期を連続受講したら、その講座内容がとてもよくて、すっかりヨガにハマりました」

ちなみに、わたしが受講したのは同じYoga with Rio 朝活RYT200の7、8期。あずささんはすでにヨガインストラクターとして活動しており、8期でRioさんのアシスタントを務めたことで、毎朝オンラインで顔を合わせる関係になった。

「ヨガの前にも、ベビーマッサージやリンパケアの資格も取ったことがあって、でも実際にそれを使って仕事にするのは大変だということは感じていました。
もともとヨガは、仕事にしようと思って始めたわけではなかったのに、ずっと変わりたくても変われなかった心と体がだんだん変わっていく感覚が、純粋におもしろいし、ヨガってすごいって思えたんです。といっても、体重はまったく減らなくて(笑)、でも柔軟性は上がったんですよね」

太陽礼拝でも何度も繰り返す前屈は、自分の体の柔軟性を自覚しやすい。

心の方にも少しずつ変化があり、その変化は今も続いているという。

「前は、『4人も男の子を育ててすごいね』と言われても、素直に受け止められなかった。『全然ちゃんと育てられてないし』とか『話題がないからとりあえずそう言っているだけでしょ』とか思ったりして。でも今は、自分もそう感じていること、たとえばわが子のいいところをほめてもらえたときは、謙遜しないで『ありがとう』って言える。あと、子どもたちが全員やせ型で、「お母さんは太ってるのに」なんて思われてるんじゃないか、って前は気にしてたけど、そうした自己否定もだんだんしなくなってきたかな」

人はみんな違うんだ、と気づいた

あずささんの内側を長年占めていた強い体型コンプレックスと、容姿への執着心、自分を受け入れられないかたくなさは、ヨガの何によってほぐされていったのだろうか。

「心が変わらないと体は変わらないと知ったことかな。心が自分を否定しているかぎり、自分の体は変わってくれない。でも、同じものを食べて同じように動いても、心が変わると、ちゃんと体が変化する。そのことに気づいたことは大きいです。
ヨガでは、もちろん哲学も大切な要素で、八支則とか、実生活と結びついていることで守れることは守りたいって思う。だからといってガチガチにヨガ哲学とともに生きていこうとは思っていないです。
でも、実践と離欲によって、少しずつ人は変われるってことを、身をもって感じている。変わるといっても、全然別の人間に生まれ変わるんじゃなくて、過去の自分を受け入れて、すべて肯定したうえで進化する、という感じかな

自分が変わってきた、と感じるようになったのはまだ最近のこと

自身の変化を、最近になってようやく感じられるようになったのは、オンラインのRYT講座でRioさんのアシスタントとして「人を見る役」を任せられたおかげかもしれない、という。

もとはといえば、子どもの頃からの自己肯定感の低さによって、人を観察したり、自分を客観視したりする癖がついていた。でも、アシスタントとして受講生の方々を毎日観察していたら、当たり前だけど『みんな違うんだ』ってことに気づいたんです。

先生からアドバイスをもらったら、変えたいし、変わろうって思う。でもなかなか変われない人も、たくさんいる。そういう人たちを見ながら『なんで素直に変わらないんだろう』って思ったときに、ふと『これってわたしも同じだ』と気づいて。変わった方がいいことは頭でわかっていて、自分でも変えたい気持ちがあるのに、変わるタイミングってみんな違う。それを理解できたとき、わたし自身のこれまでの自己否定の気持ちさえ、すべてがクルッとひっくり返った。『全部つながっているってこういうことなんだ』ってやっと理解できたんです

体も、心も、自分をそのまま受け入れることができなくて、「とにかく変わりたい」という気持ちでがんじがらめだった、というあずささん。
でも実際に変化できたのは、自分ではなく他人に目を向けたことによって、というのが興味深い。

一つの想いにとらわれて、執着している間は、変われない
それより、淡々と目の前のやるべきことをやり、実践をひたすら繰り返す。
その日々を積み重ねるなかで、少しずつ少しずつ、導かれるように、自分の進む道が伸びていくような感覚。

これこそが、ヨガを続けていくなかで、目にすることができる風景なのかもしれない。

*来週公開する後編「変わりたいのにずっと変われなかったわたしへ ②」では、あずささんに「ヨガを仕事にすること」について深く聞いていきます。どうぞお楽しみに!

八木あずささんの現在の活動はインスタグラムからご覧いただけます↓

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「ヨガ哲学」はヨガをする人だけが学ぶものではなく、4千年以上も受け継がれてきた思想だからこそ、現代を生きるわたしたちの悩みにも寄り添ってくれる優しさと普遍性があります。 自分との向き合い方。他者との人間関係。働き方への迷い。モノの持ち方や手放し方……現在進行形で学んでいるヨガ哲学を、身近なテーマとリンクさせながら、3000字〜5000字の読みごたえのあるエッセイとしてアウトプットします。日々のモヤモヤにヒントを渡すヨガ哲学の言葉や教えを、わたしのフィルターを通してシェアする場所です。

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