12年前の自分と出会う日記
今年からVoicyで音声配信をスタートして、わたしの過去の作品を読みたいと思ってくださる新しい読者の方々と出会えたことを、いよいよ一年を振り返るこの時期、しみじみとありがたく思っている。
現在中学生になる娘が、まだ幼かったころのブログを読んでみたいというリクエストを、Voicyのリスナーさんからいただいたことをきっかけに、古いブログの再編集作業に取り掛かったことは、これまでも何度か語ったり、書いたりしてきた。
その作業は、新刊制作中の数ヶ月間は中断していたものの、また再開し、このたび、とうとう、第1巻目リリースの運びとなった。
今日から、わたしのウェブサイトのオンラインショップで販売します。
当時、ブログは毎日欠かさず更新していたけれど、再編集によって、子育てと家族の話だけを残すことにした。
日記は、2010年8月、娘が1歳10ヶ月のある日からスタートし、たどたどしたかった言葉が、いつのまにかはっきりと発音できるようになったり、古いムーミンのアニメやトトロの映画に夢中になったり、ミッフィーのぬいぐるみとおままごとをして遊んだりする様子を、わたしは毎日おもしろがりながら見つめ、写真に撮り、その成長を言葉にして書き留めていた。そんな38歳のわたし自身の視点の記録でもある。
今では目線が並ぶほどに成長した娘が、12年前はこんなにも小さくて、でも今と変わらずおもしろくて目が離せなくて、あぶなっかしくも愛らしい存在だったんだなぁと、急にすすんだ老眼で、夜のパソコン作業に目をしょぼしょぼさせながらも、わたしの胸はずっとあたたかく、しあわせだった。
このブログを書き始めた時期、わたしたち家族はまだ東京・世田谷の古い一軒家で借家暮らしをしながら、現在の住まいである千葉の家のリノベーションにも取り組んでいる。
仕事と育児の合間に、何度も工事中の現地に足を運んでは、建築家さんや工務店さんと打ち合わせを重ねた。
壁紙を決めたり、照明を選んだりした日の日記もあるし、引っ越し数日前にギリギリで完成した家の、まだ家具を運び込む前の写真もある。
写真を1枚1枚並べ、テキストを転記し、同時に読みやすく整えるという作業をしながら、ずっと、12年前の自分を背後からのぞき見ているような感覚だった。
そこにいるわたしは、数ヶ月後に東日本大震災が起きて、帰宅難民を経験することを知らない。
数年後、40代になって、雑誌編集者から著作を出す文筆家にシフトチェンジしようとする未来も知らない。
ただ目の前の子どもとの愛しい日々を夢中で過ごす、38歳のわたしがそこにいて、50歳の自分がこの日記を再編集しているなんて未来も知らずに、毎日毎日、ブログを綴っている。
すすめられて書き始めたブログが、やがてこんなふうに自分の作品として世に放たれることになるなんて、人生とは、なんておもしろいのだろう。
ただ日々の些事を「撮り」「書き」「公開する」ことをしていた自分に、12年後、不意にごほうびが贈られた。そんな気持ちで、この作品をオンラインショップに並べます。