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経済と向き合うとき

「2020年はお金のことを勉強したい」と、昨年夏に思い立ち、noteでも何度かお金をテーマに文章を書いてきた。

IdecoやNISAといった制度について調べたり、お金に関する本を読んだり、セミナーを聴講したりといったことを少しずつ始めていた矢先、今回のコロナショックが起きた。
47歳にしてようやく興味を持った「経済」に、結果的には興味があろうとなかろうと正面から向き合わざるを得ない事態となっている。新型ウィルスの脅威は世界中の経済活動を停止や停滞に追い込んで、今は誰もが何らかのかたちでその影響を受けているからだ。

海外の各都市で外出禁止令が発動され、日本でもとうとう東京都知事が「週末の外出を控えるように」と発表したばかりだが、わたし自身は、今は政府からの自粛要請とは別に、外出はできるかぎりしたくない。

人工呼吸器が足りなくなるほど大勢の患者が次々と病院に運び込まれている報道を見るにつけ、この世界的非常事態をなんとか収束の方向へ向かわせる以外に優先すべきことなど、思いつかない。
今日テレビを観て「大変だね」と言っている自分が、明日にでも感染者になってしまうかもしれないのだ。そんな不安を抱えながらでは、気晴らし目的の外出を純粋に楽しむことなどできるはずもない。

だから、新刊の校了も終えてあとは発売を待つのみ、花粉症もピークを過ぎて桜はまさに見ごろ。何もなければ絶好のお出かけチャンスの時期だったとしても、外出は、車で娘の塾の送迎、人影もまばらな土手のジョギング、ギリギリの回数にしぼった食料品の買い出しのみ、という意識で過ごしている(そのジョギングすらイタリアでは禁止されていると聞き、また心が沈むのだけれど)。

そうした生活を送りながらいつも以上に本を読んでいるなかで、タイムリーだったのがこちら。

タイムリーといっても出版は8年前。それでも、お金の概念や歴史にはじまり、戦争や大恐慌、オイルショックやリーマンショックなどの経済危機によって市民の生活に起きた混乱、意識の変化とはどんなものだったのか、そうした事態に政府や日銀や銀行はどのような具体策で対処したかといったことを、さすがのわかりやすさで解説してくれる。
今まさに新聞やニュースで報じられている内容とリンクする部分も多々あり、以前はちんぷんかんぷんだった経済ニュースへの苦手意識が、この本のおかげで薄れてきた。
それにしても、なぜ池上彰さんの言葉を通すと、こんなにもあらゆる物事がするすると理解できる(気がする)のだろう? それこそ娘がよく使っている言葉でいうところの「神」だわ、と感動しながら読んだ。

大人として恥ずかしいかぎりだけれど、これまで生きてきて、経済という視点で世の中を見たことが、ほとんどなかった。

しかし、治療用ワクチンもない新型ウィルスの猛威に人類の生命が脅かされ、外食や観光やイベント業界が営業停止を余儀なくされたり、一方で、冷凍食品メーカーの株価が上がったり、スーパーやドラッグストアで買い溜めが起きたり、なぜかホットプレートの売上げが好調だったりといった現象を目の当たりにすると、この世で起こるうれしいことも悲惨なことも、すべて経済を動かす要因となっていると感じる。そうした視点が加わったことも、この本を読んだ影響だと思う。

そして池上彰さんは本のなかで、こうも言っていた。
「景気の『気』とは気分のこと。みんなの気分がよければ景気は上がり、みんなの気分が落ち込んでいれば景気も悪いんです」と。

ということは、こんなにも大勢の人が亡くなってしまっているコロナ騒動後の世界は、その悲しみや不安が残る間は経済の落ち込みが続くのだろうし、それによって引き起こされる世界的な不景気の中を、わたしたちはこの先も生きていくことになる。

これまで大切にしてきた、心地よく暮らすこと、その内訳としての、自分で料理して食べること、筋肉を鍛えること、好きなことで仕事することなどと並んで、経済(お金)の意識をしっかり持つことが、これからわたしのなかではマストになっていくだろう。

数年前は考えもしなかったことだけれど、この自分の変化を前向きにとらえたいと思っている。

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