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受験とメルカリ 2

わが家の中学受験が終了した。

結果は、今でも信じられないのだが、第一志望校から合格をいただけるという驚きのエンディングだった。

あ、でも一応、念のため。
これまでのわたしの中学受験関連の記事を読んでくださっている方ならご承知だと思うけれど、わが家の受験は、優秀な小学生が難関校を目指すといったタイプのものではなかった。
ごく普通の、いやむしろ精神年齢はやっと小4になったかならないか、という幼さを残す12歳の娘が、親戚や知人も通う地元の中堅校を目指した、中学受験ドラマとしてはいささかスケールの小さな物語である。

それでも、受験生の母としてわたしが味わった心身のつらさは自分史上最大規模のものだったし、もちろん娘も、終始マイペースで楽観的だったとはいえ、本人なりにしんどい思いをしていたはずだ。
その末に、娘がいちばん行きたかった学校に合格を果たすことができた。
これはわが家にとって、これ以上望めないほどのうれしい結末である。

そのことはまぎれもない本心である一方で、いわゆる中学受験ネタとして世間的に引きの強い「難関中学に合格した親子の受験テクニック」的なものを語れる立場にはないと自負している。
それでも今、受験を終えたばかりの立場として、次の受験生親子に伝える何か実用的で普遍的な話題はないかと考えたとき、ふと浮かんだのが「受験期におけるメルカリのありがたさ」だった。

合格発表の翌日、娘と連れ立って塾にお礼を伝えに行った。
最終的な持ち偏差値より3ポイント高い学校の合格を勝ち取ったことについて、塾のクラス担任の先生は「勝因は、最後1ヶ月のがんばりと、きっと過去問を解いた数だと思います。塾にあるかなり古い問題をコピーして渡しても『これもやったことある』って言うので、いったい何年分の過去問を揃えたのかと聞いたら、『うちに12年分あります』と。実際に過去問で解いたことのある問題と似た問題が今年の本番でも出たようですし、その作戦の勝利でしょうね」と言ってくださった。
わたしが心のなかで大きくガッツポーズをきめたのは、言うまでもない。
そしてその12年分の過去問は、メルカリがあったからこそ入手できたのだ。

面接用のスーツもメルカリで

というわけで、今回は「メルカリに助けられた、その2」。
併願校の面接用スーツ(受験生用)もメルカリで調達した話である。

中学受験で面接を行う学校は年々減少傾向にあり、とくに今年はコロナによって面接を中止した学校もあったが、娘が受験した学校のなかには、生徒だけの面接を実施する学校が2校あった。
いずれも熱烈第一志望校ではなく、試験慣れのために受ける早めの日程の他県の学校と、第一志望校に何度チャレンジしても不合格だった場合はこちらへ、という第二志望校である。

中学受験の面接の服装について調べてみると、女の子ならばブレザーとプリーツスカート、白いブラウス、襟元におとなしめのリボン、白か紺色のハイソックス、というのが一般的らしい。
就職試験と違い、面接の内容が学力試験の合計点に影響することはほとんどなく、学校側も説明会で「面接はごく短時間のグループ形式で、コミュニケーションが普通にとれるかどうかを確認するだけです」とはっきり言っていた。

うちの娘、勉強ではそりゃもう苦労したが、性格は明るく物怖じしないタイプ。また、いい意味でどちらの学校も「本命の相手」ではなかったこともあり、学力試験後に行われる面接を楽しみにしている様子さえあった。

それで、着用機会たった2回といえども、面接がある学校を受ける以上、浮上してくるのが「スーツをどうする?」問題である。
数年前に姉からおさがりでもらっていた、姪っ子たちが中学受験で着たスーツは、よくよくサイズを確認すると150cm。すでに身長が165cmに届きそうな娘には、とても着られないことが判明。

卒業式でも着るだろうし、買うしかないか……とネットで探す。
せっかく買うなら、仕立てのきれいなトラッドブランドのものが欲しくなってくる。
すると、まぁ当然だけれど、高い。スーツで揃えたら6万円は軽く超えそうだ。

ただでさえ、どの中学校も1回2〜3万円の受験料がかかる。
くわえて、もし本命より先に併願校から合格をいただけた場合(なるべくそうなるようにスケジュールを組むのが普通だ)、本命に受かるまではその学校の入学資格も保持しておかなくてはならない。
そのためにはいわゆる「手付け金」を支払って、入学金の払い込みや入学手続きを待ってもらうのだが、それにまた数万円がかかる。学校によっては、入学の可能性がある場合はすぐに入学金だけでも15万円とか20万円とか納めてくださいというところもあり、そうして払い込んだ前金は、第一志望校に合格してそちらに入学を決めた時点で、パァとなってしまう(涙)。

私立中学受験システムがそうしたルールの上に成り立っている以上、その出費は仕方がないものだとして、ならば、コミュニケーション能力確認のための5分程度のグループ面接に着るジュニア用スーツに6万円を払うのは、仕方がない出費だろうか?という疑問がわいてきた。

服をメルカリで買うことはそれまでしたことがなかったのだが、ためしに探してみると……わわ!あるじゃないの! きれいなジュニア用スーツがいっぱい!
サイズもちゃんと記載されているため、新品をオンラインで買うのと変わらない。
写真や説明文を吟味しながらいくつか候補をしぼり、そのなかから「中学受験と卒業式で3回しか着なかったのでとてもきれいな状態です」と説明のある、老舗トラッドメーカーのブレザーとプリーツスカートのセットを選び、4000円で購入した。
出品者の方に購入前にいくつか質問させてもらい、その受け答えで常識的な方だろうという見当はついていたが、届いてみたら、きちんとクリーニングに出され、ていねいに保管されていたことがわかる上質なものだった。
当初は、とりあえず併願校の面接2回をしのげればいい、というつもりだったのだが、そのスーツがあまりにもきれいで娘にもよく似合ったため、ブラウスとリボンだけ新しくすれば卒業式もこれでいいよね、と話している。

ブレザーの金ボタンまで見つかる

さらに、「メルカリってホントすごすぎる!」と感動した一件があった。

1回目の面接を終えて帰宅すると、娘が「そういえばブレザーのボタンが取れてなくなっちゃった」と言い出した。

そりゃまずい、と焦って確認すると、たしかにフロントのメインボタンが1個ない。娘はどこで落としたのかもわからず、帰りのバスで気づいて座席の下まで探したが見つからなかった、と言う。

ブツブツ文句を言いながら、そのメーカーのオンラインショップを見てみると、金ボタンだけなんて売っていない。店舗まで出向いて相談するしかないか……でもうちから気軽に行ける距離の店舗もない。
ボタン1個のために、日々感染者増加中の都内まで出かけるか? まさか!
 でも、大きさやボタンの絵柄もあるし、電話やメールでやりとりして送ってもらうのも、それなりに時間と手間がかかりそうだ。

さすがにないだろうけど、一応ね、とメルカリの検索欄にそのメーカー名と「金ボタン」の文字を打ち込んでみた。すると……ウソ、信じられない! そのメーカーの金ボタンを6個セット900円で出品している人がいる!
大小2種類、ボタンの横にメジャーも置いてくれているため、サイズ確認もバッチリ。ボタンの柄も娘のブレザーのものと同じだ。間違いない。

次の面接日まで1週間しかなかったため、さっそく購入して「できれば○日までに受け取れたらうれしいです」とコメントを送ると、出品者の方はその日のうちに発送してくださった。おかげで2日後にはボタンが手元に届くという、こんな素敵なことがあっていいのでしょうか、という出来事だった。

ちなみに娘の入試結果はというと、ボタンを失くした1回目の学校(お試し校)は不合格、ボタンを付け替えて挑んだもう一つの学校(第二志望)は合格だった。というわけで、メルカリで手に入れたスーツでも、落ちるところには落ちる、受かるところには受かる。要は本人がその服を着て平常心で試験が受けられたら、それでいいのだと思う。

わたしがメルカリを活用するなかで気づいたのは、「メルカリをやるとモノを捨てないでいい」、転じて「モノを大切に扱うようになる」ということだ。

自分のところで役目を終えても、また次の誰かのところで役立つかもしれない(つまりはメルカリで売れるかもしれない)と思うと、自然とそのモノをていねいに扱うようになる。
そして、引き継ぎ手が見つかった(つまり売れた)ときは、できるだけきれいな状態で送り出して、相手に喜んで受け取ってほしいと願う。
家が片付いていくだけではなく、メルカリを通してモノを循環させることで得られるこうした「気持ちの面での清々しさ」については、あまり知られていない気がするのだけれど、どうだろう。

これだけ利用者が多いと、マスク不足のときに高額転売するような、モラルを疑ってしまう人も残念ながら混じっているのかもしれない。
でも、自分なりのルールやものさしを持って活用している身としては、メルカリにはイヤなところが見つからない。

というわけで、後半は受験の話からは少々逸れましたが、とにもかくにも受験を終了した立場として、これからもお伝えできることは書いていくつもりです。
これまで、受験ネタの記事にコメントやサポートなどで応援と励ましを送ってくださった皆様には、心よりお礼を申し上げます。
ありがとうございました。


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