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タイトルの筋トレ

今年1月からスタートしたVoicyが、9月20日に放送200回を迎えた。

100回記念の際は、ちょうどVoicyさんが「私の神回」というトークテーマを設けていたタイミングだったこともあり、「再生回数や『いいね』の数字からは見えてこない、リスナーさんの『この放送が好きだった』という思いをシェアしよう」と思いつき、コメントを募り、そのすべてに返信する放送を届けた。

そこで200回放送も、やっぱり「リスナーさんが選ぶ神回」というテーマにしようと、まず決めた。

100回放送時よりフォロワー数が増えていることと、コメント返しは現在プレミアム放送(有料放送)限定コンテンツとしているため、今回は前の週にリスナーさん(プレミアム会員であるなしにかかわらず)にアンケートを実施した。

Googleフォームでアンケートを作成し、それを放送のたびに添付してアンケート協力を求める、というのを5日間続けた結果、116名の方からの回答が得られた。

それを集計して、ランキングを発表する日を、ちょうど200回放送にあてたところ、1日で再生回数が一万回を超えた。これはわたしの普段の放送の1日目の再生回数の倍といってもいい数字である。

この第200回放送のタイトルや、上位にランクインした放送タイトルの共通点として、「内容が(聴く前から)わかりやすい」「そそられる」「キーワードが立っている」ことが挙げられる。

わたしのVoicyではこういう話が求められているんじゃないか、と勝手に思っていた実用的な家事ネタの放送は、それなりに人気ではあったものの、結果としては、思考について語る抽象的な話の方が票を集めたことも興味深い。
フォロワー4500人(アンケート当時)に対して回答数116人のなかで浮かび上がってきた数字ではあるものの、やはりアンケートを実施してみなければ見えてこなかったことであり、作業的にはそれなりにたいへんだったけど、やってよかったと心から思っている。

また、編集者的目線として、やっぱり「タイトルは大事だ」という実感があった。

そもそもアンケートに協力してもらおうと思っても、たった5日間で対象放送60本をすべて聴き直せる人なんていない。
タイトルを見て、次に内容の見出しを読んで「あぁ、そういえばこういう放送だったっけ」と思い出してもらって、気になるものを時間の許す範囲で聴き直してもらう。
それをお願いしようと思ったら、1本1本に「わかりやすいタイトル」がついていることが大前提となる。

このアンケート企画自体は思いつきだったけれど、Voicyをはじめた以上、「どうしたら聴いてみたいと思ってもらえるか」「そういう人を増やせるか」はつねに大きな課題であって、その流れで「タイトルが大事」ということはいつも意識していた。それが別の角度から「やっぱり大事なんだ」という気づきとなったのが、今回のアンケートだった。

けれど実は、わたしはもともと「わかりやすい(わかりやすすぎる)タイトル」にはむしろアンチ派の姿勢をとりがちな人間だった。

「自分は物書きで、本をつくることこそがわたしの仕事である」というこだわりを強く持っていた時期、とくにそうだった。
今も著書のタイトルに関しては、「わかりやすすぎる」のを避けたがる傾向はあって、なぜならそこを優先すると、情緒や余白というのものが失われがちだからだ。本のタイトルは、やがて読者の本棚に並んで残っていくもの(願わくばそうあってほしいもの)であり、「背表紙を他人に見られたらちょっとはずかしい」というものではありたくない。

ここがむずかしいところで、タイトルを見たら内容がわかり、そそられる(つまり思わず手に取りたくなる)本は、書店の売り場では強いのだ。というか、そうでないと存在にすら気づいてもらえない恐れもある。
「こういうタイトルがいい」という価値基準が、書店と、自宅の本棚では違うから、やっかいなのだ。

わたしが好きな本は、一人で佇んでいると独特の存在感に惹かれるのに、大勢のなかに紛れると見失ってしまう人のように、パッと目を引く派手さに欠ける傾向がある。
タイトルも、言葉としての美しさ、奥行き、広がりのようなものを感じさせる、短いけれど深みのある言葉にしたいといつも思っている。

でも、Voicyの放送タイトルは、それとはまったく違う視点でつけたほうがいいということが、今はわかっている。
「わかりやすく」「そそられて」「キーワードが立っている」それでいて「自分らしい言葉」であること。

そんな意識で毎日毎日タイトルを考えるのは、ある種の筋トレに近い。

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