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第37話 磯野、野球しようぜ

拳を握り締め、カツオは叫ぶ。
「なかじまあああぁぁあああああ」

哀れみか蔑みか、まるで躾のなっていない犬でも見るかのような眼でカツオを見下ろす中島の手には、血の滴り落ちるバット。
その傍らにぐったりと横たわり、ピクリとも動かないフネの姿が。
「いそのぉ。なぁ、いそのぉ。僕達ずっと友達だって言ったよなぁ。毎日野球して、駄弁って、親友だって言ったよなぁ。」
声を震わせながら動かなくなった肉塊をバットでこねくりまわす中島。
「僕はさぁ、ただ野球をしようと思って誘いに行っただけなんだよ。なのによぉ、お前の母さん。俺を見るなり警察なんか呼んじゃってさぁ。殺すつもりはなかったんだよ。ただちょっと静かにしてもらおうと思ったのに、暴れるからついかっとなっちゃって。バントのつもりがフルスイングになっちゃ….」

ねっとりと喋る中島が言い終わる前に、カツオは中島の顔に目掛け飛び出し、拳を叩き込んだ。

が、不適な笑みを浮かべよだれを垂らす中島の前に突然現れたカツオの拳を止める男。
「ダメじゃないかぃカツオくぅん。また、サザエに怒られるよ?」
カツオは驚きを隠せず、かすれた声で呟く。
「マスオ…にい…さん…..?」

膝をつき、落胆するカツオの頭に銃口を向け、嬉々として話す。
「カツオくぅんのその表情が見たくてねぇ。そのためにわざわざ中島くんをシャブ漬けにして義母さんの家に送り込んだんだよぉ。」

笑みを浮かべるマスオに声を荒げ問いかける。
「マスオにいさんは海山商事の乱でお父さんと死んだはずだ。なのになぜ…」

カツオの問いかけを遮るようにマスオが叫ぶ。
「お義父さんもお義母さんも馬鹿だよなぁ!早稲田大学卒の僕を本気で怒らせるんだから。莫大な遺産目当てじゃなけりゃ、あんな珍妙ヘアスタイルの女、誰が結婚するか。」

涙を浮かべながらカツオは問いかける。
「僕達を、磯野家をそんな風に思ってたなんて…」

嗤うマスオ。
「滑稽だったよ!お義父さん、最後に何て言ったと思う?娘を、家族を頼むだってさぁ。馬鹿だよなぁ。そんな馬鹿だから全自動卵割機なんて古代遺物に騙されるのさ。そしてカツオくぅん、お前もだよ。早稲田卒の僕を、あの時のたった一度の捕球ミスを笑ったせいでこうなったんだ。ぼくのプライドを踏みにじった罪を償う時が来たんだよ。」

引き金に指をかけ、ちからをこめた。
バンッと鋭い音が響き渡る。
倒れこむマスオと中島。
なにが起きたのか理解が追い付かず、戸惑うカツオの後ろから声がする。

「なにやってんのぉ、ふぅうぐたくぅぅぅん。」

ふらつき肩を抑え立ち上がりマスオが呟く。
「生きてやがったのかぃ、人間の形をした唇の分際で。」

笑みを浮かべ、スナイパーを構える唇の後ろから、重機のような声が響く。
「いぃいいぃいいぃいいいいずぉおおぉぉおぉおおおおおおぉぉおぉのぉぉぉおおぉぉおおぐぅうううううん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」

一瞬、大型戦車と勘違いしてしまう様な重圧。間違いない。

「は、HANAZAWA零号機….」


遂に役者は揃った。
次回「さらば東芝。そして伝説へ」


今週のお便りのコーナー

P.N  ベンデルト.ションデル さん
「第24話でタエコさんが覚醒秘孔を突いたとき、いささか先生がアジャイルしたのはなぜですか?
あと、タラちゃんが神風三輪車するシーンが一番好きです。応援してます。

回答
いささか先生がアジャイルしたのは、第4次元のワカメにコンタクトできたからです。ビユーィの石をいくらちゃんから盗んでた際に、次元の裂け目からワカメがブリストしたのも影響してます。

次回更新は作者取材のためお休みです。


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