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RPGに戦闘は必要ではない!

30年ほど前には、RPGとAVGの違いは戦闘(とレベル)の有無だと言われていたことがありました。
他には、自由な移動の有無とか。
本当にそうでしょうか?
これは、RPGにおいて戦闘は必須要素ではありません。というお話。

固定観念

ゲームにジャンルというものが定まってずいぶん経ちます。
そのため、各ジャンルについてこういうものだっていう固定観念が出来上がってしまいました。
RPGについては、やはりドラクエの影響が大きいと思います。
つまりRPG=ドラクエのシステム、ということです。
こうした固定観念は、各ジャンルをとっつきやすくする面もありますが、逆に凝り固まって柔軟な発想を妨げる場合もあります。
特にクリエイターにとって、発想の妨げは良くありませんね?

そもそもロールプレイとは?

RPGは「ロールプレイングゲーム」の略称です。つまりロールプレイするゲームこそがRPGということになります。
ではロールプレイとはなんでしょうか?

ロールプレイは日本語だと「役割を演じる」と訳されます。
これはつまり、「プレイヤーが架空のキャラクターを演じる」という意味です。
元来のRPGでは、プレイヤーは架空のキャラである戦士や魔法使いなどになりきって、そのキャラの性格や職業、体格などを考えながら「このキャラはこういう思考をする、こういう行動をする」と考えて操作します。
文字通り、俳優が役になりきって演技するのと同じです。

現実の一部の仕事では「ロールプレイ」をすることがあります。
例えば接客業で、店員役と客役に分かれて接客サービス向上のためのロールプレイをすることがあります。
このことからも分かるように、ロールプレイとは役割を演じることそのものを指しているのです。

元来のRPGとは?

元来のRPGとはテーブルトークRPG(TRPG)です。
これは次のような流れで進みます。

  1. ゲームマスター(GM)1名とプレイヤー複数名が集まる。

  2. プレイヤーはキャラクターシートに好きなキャラを書き込む。
    パラメーターなどはダイスを振って公正に決める。

  3. GMは用意した舞台やプレイヤー(PC)が置かれている状況などを説明し、ゲームを始める。

  4. PCは各自状況を理解したうえで、そのキャラになりきって自由に行動する。

  5. GMは用意した謎解きや戦闘などを交えつつPCをうまく最終目標まで誘う。

  6. 最終目標を達成したら経験値などを分配して終了。(最終目標は戦闘ではない場合が多い)

さて、上記の中で「謎解きや戦闘など」と書きましたが、GMがどんなシナリオを用意するかは(世界観を壊さない範囲で)自由なので、必ずしも戦闘があるわけではないし、逆に戦闘しかない場合もあります。
これが元来のRPGです。

コンピューターRPG

RPGをコンピューターで再現しようとしたのが、ウルティマでありウィザードリィです。
ドラクエはこの2作品をミックスして作られました。
コンピューターRPGは、CRPGと言われます。
コンピューターでは、あらかじめプログラムに用意したシナリオしかできませんので、TRPGのように柔軟に行動することはできません。
CRPGの要素は、プログラムやハードの性能などとの試行錯誤の結果固定化されてきたものです。

ソーサリアン

そんな中、最もTRPGに近いCRPGが誕生します。
それがソーサリアンです。

ソーサリアンの画面

ソーサリアンは、まずキャラクターメイキングがあり、パラメーターは乱数で決まります。職業や年齢を設定し、パーティを組んで用意された15本のシナリオを攻略します。
シナリオは何度でもプレイでき、順番も自由です。
さらに拡張シナリオも多数用意され、ユーザーが投稿したシナリオなども製品化されました。GMが自由にシナリオを作るかたちにかなり近いです。
また、戦闘がほぼないシナリオなどもあり、経験値もイベントを達成することで得ることができます。
CRPG史上、これほどTRPGに近い仕組みはないのではないでしょうか。

ウルティマオンライン

別の視点で、RPGとは本来複数の人が集まって遊ぶものです。
それを具現化したのがウルティマオンラインに始まるMORPG、MMORPGです。プレイヤー同士がオンラインで会話しながら進めることによって、みんなでワイワイ楽しむ要素や、キャラクターを演じる要素をCRPGで達成することができました。
これも歴史的快挙ですね。
MMORPGでは自由にその世界で過ごせる場合もあり、町で商売する人や戦闘に明け暮れる人など様々です。

ウルティマオンラインの画面

まだ戦闘は必須だと思いますか?

さて、ここまででRPG=ドラクエという固定観念はなくなったでしょうか?
RPGは、自分の好きなキャラクターになりきってその世界を楽しむ、いわば異世界転生のようなゲームなのです。

クリエイターが用意した世界をどのように楽しませるか。
ひたすらダンジョンに潜ってお宝を持ち帰るようなゲーム、商人になって街を発展させるゲーム、未知の大陸を開拓するゲームなどなど、方法は無数にあります。
RPGは決して、ザコを倒しながらレベルを上げてラスボスを倒すゲームではありません。それは楽しませ方の一種に過ぎないのです。

RPGとAVGの違い

冒頭の、RPGとAVGの違いに戻りましょう。
この両者、はっきりした違いというものはないのですが、強いて挙げるならば「役になりきるかどうか」だと思います。
RPGではキャラクターメイキングをしますので、プレイヤーはそのキャラに愛着を持ってなりきりやすい。
AVGは主人公がいますが、主人公になりきって進めるかというとちょっと違っていませんか?あくまで第三者目線で、小説の読者の立ち位置に近いのではないでしょうか?

ということはRPGの必須要素とは?

あらかじめ作り上げられたキャラクターを操作するだけでは、役になりきりにくいですよね?
元来RPGはキャラクターメイキングをして始めるものです。
どのくらい作りこめるかは、ゲーム性やハードの性能などによって違いますが、ドラクエも最低限名前だけは自由に決めてスタートしていました。だからこそ勇者=自分という感情移入ができるのです。

つまり、RPGに必須の要素とはキャラクターメイキング。
RPGとAVGの違いは、キャラクターメイキングの有無だといって差し支えないのではないでしょうか?

かといってジャンルに固執しない

以上の話は「RPGには戦闘があるものだ」という固定観念への回答です。
しかしゲームを作るにあたっては、「RPGを作ります」「AVGを作ります」などと特に制限する必要はないと思います。
ジャンル分けはあくまで遊びたいゲームを決める際のガイドラインのようなもの。
作り手としては、入れたい要素を自由に入れてジャンルに縛られないものを作るのが一番です。
ぼくが言いたいことは、「戦闘がなければRPGじゃないから」と思い込んで不必要な戦闘を入れる必要はないですよ、ということです。

おわり


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