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川根本町「ドローンを活用した新スマート物流」事業とはどういったものなのか。

こんにちは、佐々木です。
今日は雨で、少し肌寒いです。
きょうは朝に少し仕事があったものの、子どもたちが保育園に行ってからは15時まで予定がなく、昼間は家でゆっくりです。
こういう日にニットのカーディガンを引っ張り出して着て、たっぷりの紅茶をいれて、心に余裕をもって事務仕事や読書をする時間がとれることは、なんともいえない充実した余白だなあとしみじみします。
こういう日はむしろこれくらいの静かな雨と肌寒さを感じる天気が合っているかもしれません、会議とか打ち合わせだったら捗らないかもなあ。

さて、今日は川根本町で6月1日からはじまる「ドローンを活用した新スマート物流」事業について、説明をしていきます。
新聞やテレビなどのマスメディア、町の議会だよりや広報でもたびたび取り上げられているので、なんとなくはご存じの方も多いと思います。
この記事では、なぜこの事業に対して町が大きな予算をつけるのか、どんなふうに事業がスタートし、展開していくのかを改めて整理してお伝えしますね。
少し長くなります。

川根本町で「ドローンを活用した新スマート物流」が始まる理由。

>2023年度に川根本町と3社で包括連携協定を締結。

2023年12月12日、川根本町と、株式会社エアロネクスト、セイノーホールディングス株式会社、KDDIスマートドローン株式会社は、町が目指す過疎化等の地域課題の解決に向けて、町内でのドローン配送実証事業を含む次世代高度技術の活用による新しい物流のビジネスモデルの構築を目的とした連携協定を締結しました。

町と3社での包括連携協定締結式

この協定に先駆けて、2023年の9月と12月にそれぞれ2日間、町内で、災害時の孤立集落へのドローン配送を想定した実証実験を実施し、ドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流の社会実装に向けて動き出していました。

〇第一回実証実験(2023年9月2日、3日)
9月2日は、防災祭りの中で出発式を開き、事業説明や実際のドローン配送のデモフライトを実施。デモフライトは、役場本庁舎から河川敷(距離約800m、時間約3分)と三ツ星キャンプ場(距離約550m、時間約2分)へ川根茶セット(重さ約2.1kg)を配送する2フライトを実施。
9月3日は有事の際を想定し、孤立被害が想定される2つの集落(尾呂久保地区(距離約3.7km、時間約10分)、壱町河内地区(距離約5.3km、時間約12分))で、非常食セット(重さ約1.7kg)をドローンを用いて配送。
〇第二回実証実験(2023年12月3日、4日)
12月3日は有事を想定したドローン配送の実証実験を実施。孤立被害が想定される坂京地区への物資輸送を想定し、役場総合支所から坂京地区へ(距離3.5km、約7.5分)非常食を配送。
12月4日は子どもたちにドローン配送を体感してもらい将来への期待などを感じてもらうため、本川根小学校と本川根中学校間のドローン配送の実証実験を実施。小学校と中学校間をドローンが一往復。本川根小学校から本川根中学校へ(距離約1km、約3分)肉まんとあんまんを、本川根中学校から本川根小学校へ(距離約1km、約3分)

さて、この連携協定の締結にはどういった経緯と理由があったのでしょう。

>着想は緊急時の物資輸送のためのドローン利用。

2022年9月に川根本町に甚大な被害をもたらした台風15号。
土砂崩れ等により孤立した集落もありました。
孤立した住民は、一時、食料品、生活必需品、衛生用品等が手に入らない状態に陥りました。
行政はただちに道を調査し、車が入れないながらもバイク隊によって物資の輸送がされました。

川根本町には孤立しうる集落が多くあります。
バイク隊でも物資の輸送が困難な事態もあり得るかもしれない。
そこで白羽の矢が立ったのが、ドローンを使った空からの物資輸送です。

>災害対策の他の川根本町を取り巻く様々な課題、問題。そしてそれの解決(緩和)策は。

1、「買い物弱者」の増加(高齢化、商店の減少)
買い物弱者とは「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々のこと」と経済産業省が定義しています。
川根本町の高齢化率は県内トップです。
高齢化や人口減少などの影響で、身近な場所から買い物をするための店が撤退する地区が増えていますし、そのうえ、高齢のために車が運転できない等の理由で買い物に出かけることが困難に感じる人が多くなっています。

2、物流の2024年問題(インフラの弱体化)
物流・運送業界の「2024年問題」とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称のことです。 具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されています。

【2024年問題によってなにが起きるのか】
一つ目は、運送・物流業者の売上、利益が減少する問題です。
規制により、1日に運べる荷物の量が減るため、運賃を上げなければ収入が減少してしまいます。
しかし、運賃を上げることは容易ではありません。6万社を超える運送業者の過当競争の中、荷主企業はより運賃の安い業者へ依頼するため、運送業者が荷主と価格交渉しにくい現状があります。また、中小企業で月60時間の時間外労働が発生した場合には、2023年の法施行により割増賃金率が25%から50%へ引き上げられることから人件費が増加し、利益の減少に繋がります。
二つ目は、労働時間の減少によりドライバーの収入が減少するという問題です。
トラックドライバーは走行距離に応じて運行手当が支給されるため、本来であれば走れば走るほど収入が増えるのですが、労働時間の規制により走れる距離が短くなれば収入が減少してしまいます。収入が低いとなれば離職に繋がる可能性もあり、労働力不足に拍車がかかる恐れもあります。

それで、その物流の"2024年問題"が川根本町にとってどう関係あるのか。
運送業者の人手不足、採算性を理由とした配送体制の縮小による不便が発生する可能性が出てきます。
現状は今日頼んで明日届くくらいの配送スピードです。しかし、今後、川根本町のような"配達困難地域"においてはスピードが鈍る可能性があります。(現在の毎日配送が隔日や三日に一回などに減少していく。)
その原因である運送業者の人手不足、採算性、さらには環境負荷を緩和するための方法として「共同配送」や、「自動化・無人化」が有効だと考えられています。

【共同配送とは】
共同配送とは複数の荷主が、荷物を一緒の車両で同じ配送先へ運ぶことをいいます。
例えば3つの企業があるとして、通常では各社それぞれで運ぶため合計で3人のドライバーと3台のトラックが必要です。
共同配送の場合、1人のドライバーと1台のトラックで3社の荷物を一緒に運ぶため人も車両も台数を減らすことができます。
1台の車両に複数の荷主の荷物を積み、全て同じ配送先へ届けるという流れになります。混載させる荷物も決めることができ、配送先が複数になることもありますが全て荷主が指定できます。

共同配送イメージ図(図の<共同配送センター>が川根本町においては<ドローンデポ>)

【災害等の緊急時の対策】【買い物弱者の増加】【インフラの弱体化】
という地域課題の解決(あるいは緩和)に有効であろう手立て
として、川根本町では「ドローンを活用した新スマート物流」事業が始まるわけです。

>川根本町での事業内容は。

実は「ドローンを活用した新スマート物流」事業というのは複数の事業内容を総括した言い方です。断片的な情報だけだと全貌がつかみにくいように思います。

こちらの図をご覧ください。この図は山梨県小菅村の事業イメージ図ですが、川根本町もこれに近いモデルの見込みです。
(昨年度、行政、議会は小菅村へ現地視察に行きました。)

川根本町がモデルにしている山梨県小菅村の事業イメージ図

〇買い物代行<事業SkyHub®Delivery>、
◯フードデリバリー事業<SkyHub®Eats>
(スカイハブ川根本町)
6/1から始まるサービス。
町内の店舗の食品や日用品、お弁当などの商品を、スカイハブの配達員が代わりに買い物して、ご自宅まで届けます。車またはドローンによる配送。(対象店舗、配達地域は順次拡大予定)
買い物弱者の助けになること、店舗の配達コストの減少が見込めます。

【スカイハブ川根本町概要】
営業日:㈫~㈯9時~18時
配送料:一回300円+買い物代行サービス料(商品代金の10%)
※12時までの注文で当日お届け
問合せ、注文は090‐3875‐2679

〇共同配送事業
ドローンデポ(既存物流とドローン物流との接続点に設置される荷物の一時倉庫であり配送拠点)を設置し、運送会社各社の荷物を集約し、車またはドローンで配送。
物流の2024年問題への対策として期待できます。
〇災害時の物資輸送
災害などの緊急時の物資輸送にドローンを役立てます。
ドローンの物資輸送には飛行ルート(電波環境など)の構築が必要です。それを平時から調査、実証実験していくことで、緊急時にスムーズに物資輸送ができます。
〇その他事業
近隣への荷物の運搬などの、既存の運送業者にはない地域密着のサービス等も想定されているようです。

いずれにしても、ドローンだけではなく、車も使います。
ドローンに注目が集まりますが、車による配送の方が取り扱いとしては多いかもしれません。
ですので、天気等によるサービスへの影響の心配はほとんどありません。

>現在の課題。

①可搬重量は最大5kg、最大飛行距離は20km程度であること。
法律や本体重量、バッテリーの性能によるもの。可搬重量、飛行距離の両方が、今後の法改正や性能の向上によって、よりよくなるのではないかと考えられています。
②参加店舗の少なさ。
サービス募集開始直後ということもあり、まだ参加店舗は少ないです。
担当課がデジタル推進課なのですが、私としては、この事業がより活性化するように産業振興課や商工会に働きかけていこうと思っています。

>まとめ

川根本町ではこの事業を三年間で1億円の予算をかけて、町の"新たなインフラ"として整備しようと考えています。
全国的にも事例がかなり少なく(全国10例目、東海地方では初)、手探りでの事業運営となる部分もあるかと思いますが、うまく機能すれば、住民にとってなくてはならないもの(=インフラ)になり得る可能性は十分にありますし、また、そうしていかなくてはなりません。

いまのところ、三年の実証期間のあとは民間に承継し、行政からの補助等なしでの自走事業をと考えられています。

私は議員として、この事業を理解し、未来を描き、関係各所に働きかけをし、住民にとってよりよいものになるように動いていきます。

>余談ですが。。

かつて、大井川では架橋と通船が禁じられていました。そのため、大井川流域の交通は極めて不便だったそうです。
筏(いかだ)にわずかな物を載せて上流から下流に運ぶ「筏流し」や、木材を一本一本ばらばらに流送する「バラ狩り」が行われていたのみでしたが、明治3年(1870年)ごろには、島田や金谷、千頭方面に「高瀬舟」が通いだしたそうです。高瀬舟は長さ12.5m幅6mで、米俵なら25俵(約1.5t)も運搬できたとのこと。
昭和6年(1931年)には、金谷~千頭間に大井川鐵道が開通し、高瀬舟の役割が終了。
千頭から上流の鉄道の届かない地域では、その後も河川流通に頼っていましたが、井川ダム建設の資材運搬のために敷設された井川線の開通とともに、川船は役割を終えました。
その後は、吊り橋の進化、車両の進化によって、陸路での物流が活発になり、住民の暮らしは便利になり、町は発展しました。

川から陸へ、そして今、空への物流革命。

転換期には難しいことも多いですが、全国に先駆けて行われる川根本町の「ドローンを活用した新スマート物流」の成功が、日本の過疎地域、さらには世界に役立つ事例になることを期待します。

川根本町議会議員 佐々木直也

川根本町モデルに期待。

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株式会社ネクストデリバリー


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