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理由もなく、意味もなく、またひとつ歳をかさねる
誕生日って好きだ。
大切な人の誕生日はただそれだけでうれしいし、自分の誕生日の存在感も好き。
自分のものに関しては何かに期待するっていうより、
「ああ、誕生日だなぁ」
とただ感じることが、なんかいい。当日もそうだし、数日前から誕生日の気配にしみじみ、でもワクワクするのが好き。多分子どものころのワクワクを今でも体が覚えているんだと思う。
私は自分が生まれた季節もかなり気に入ってる。緑が一気に成長して、ゴールデンウィークの喧騒も落ち着いて、風が心地よい季節。子どものころは新生活や新学期で新しい友達と誕生日を教え合うころにはもう自分の誕生日が終わってしまっているなんてことも多く、祝ってもらいづらくてなんか損してるって思っていた。だけど今はこの季節が好きだし、この季節にまた新しい1年を始めるということも心から好きだ。
例えば、
「私の誕生日が1日ずれていたら私の人生はどこまで違ったものになったのだろうか」
と確かめようのないことをよく考える。
生まれた時間が1時間違っていたら?
私をとりあげた人が別の人だったら?
生まれた病院が別の病院だったら?
この問いは別に自分自身の何かに不満があって、もっといい人生はなかったのだろうか、と考えているのとは全く違う。ただただ単純に、その微妙な違いが私のその後にどう響いたのだろうと考えているだけ。
今まで起こった大小さまざまな出来事が今の私をつくってきたのかもしれない。でもやっぱり、そんなことは確かめようがないし、今ここにいるこの私以外の私を見ることはできない。だからなんとなく、どんな出来事が起こってたとしても、起こらなかったとしても、私はやっぱりこの私だったんじゃないかな?と意味もなく頭の中でつぶやく。
・・・・・
2023年の誕生日、私は32歳になった。
「今年のプレゼントは物よりも経験を」
というパートナーのナイスアイディアで城崎温泉へ日帰り旅行に出かけた。本当は泊まりの旅行に出かけたいけど、私たち夫婦は愛猫たちと長い時間離れ離れで旅行を楽しめる自信はない。日帰りで精一杯。
自宅周辺は雨だったのだけど、車で日本海に近づくにつれて青空が広がってきた。水分を多く含んだ空気は濃い緑の匂いがして、霧がかかった山はいちいち大きい。何人分の1年を賄えるんだというほど広大な田んぼのほとんどにはもう田植えがほどこされていた。今だに免許をとっておらず車が運転できないけれど、助手席に座って景色を眺めること、そして調子がよければSpotifyを背景に熱唱するのが私の1番のリフレッシュ法のひとつで、目的地に到着する1時間前にはもう大満足していた。
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