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優しく、目立たない脇役でありたい



家の近所をぼーっと歩いていると、「こんにちは」と挨拶された。声の主はご近所の方。あわてて「こんにちは」と声をかけ返す。
いつもなら会えば挨拶をかわすだけ。その日もそのまま通り過ぎていくのかと思いきや、

「うち、明日引っ越しなんです」

と言われてびっくりした。そしてその言葉への自分の第一声が

「え、さみしい!」

というものだったことにさらに驚く。咄嗟に出た、うそのない「さみしい」。
会えば挨拶を交わすだけ、それでもその関係性や、その方が近くに住んでいるという何気ないこと自体に大きな好感を持っていた、と初めて気づく。そのあとも、別の地域から越してきてまだ1年経っていない私に、この土地について少し教えてくれて1分足らずの立ち話は終了した。私は「短い間でしたがお世話になりました。お身体に気をつけて!」と言うのが精一杯。正直なところ、お世話をしてもらったわけではない。それでもただご近所さんでいてくれたということが、「お世話になりました」というお礼の言葉にふさわしいと思った。


改めて話してみるととても優しい方だった。もっと話して仲良くなっておけばよかったな、と悔しくなった。他にかけるべき言葉はあっただろうか。彼女はどこへ引っ越されるんだろう。聞いた方がよかったかな?いや、聞くべきではないか。私は人と話したあと、ずっとそんなことばっかり考えてる。もっと良い言葉はなかったか、と考えるのは人が好きで奉仕したいという思いか、それともよく思われたいという見栄か、どっちなんやろうね。どっちもかな。

例えば、自分の日常とか生きてる様子をひとつの物語だとしてみる。

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