ひとりで、どこへだって行ける。
ひとりじゃ何もできない女だった。
生来の性質か、そうやって抑圧された過去があるためかはわからないけど。どこへ行くのにも、何を食べに行くのにも、「ひとりで」という選択肢がなかった。
気になる映画を見ることだって、ひとりではしなかった。いつも彼氏と一緒だったから、わたしはDVDプレイヤーの使い方を知らなかった。
もっと昔を思い返せば、見たいドラマを録画して好きなように見ていたのにね。やっぱり、抑圧のせいだったかな。
「ひとり」の選択肢を手に入れたのは、恥ずかしながらつい最近だ。今ではどうしてこんな楽な選択肢を捨ててきたんだ、とすら思えるけれど、わたしはずっとひとりでは何もできない人間だと思っていた。それこそ、見たい映画をひとりで見ることすら。
それが抑圧のせいだったかどうかは、この際どうでもいい。とにかくわたしは死ぬ前に「ひとり」という選択肢を手に入れることができたのが嬉しいし、「ひとり」はそんなに寂しいものじゃないよと言いたい。
その気になれば、ひとりで結構いろんなことができるし、どこへだって行ける。それはとても嬉しいことなんだ。
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