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シアトルを買い、住まない人々
タワーマンションは誰が買っているのか
シアトルはダウンタウン周辺で近年タワーマンションの建設が続いています。(上の写真はその1つです。)
シアトルではペットを飼う人も多く、庭付きの一戸建ての人気が高いのに誰が住むんだろうと思っていたのですが・・・。これはいわゆる「新築ジェントリフィケーション」なのですが、こういった動きに対して
「誰がシアトルを買っているのか?(Chuck Collins "Who is buying Seattle? The perils of the luxury real estate boom for Seattle."2019)」
という興味深いレポートがありました。シアトルが「富を貯めておくための場所」(Collins, 2019)として用いられていることについて、以下のような点を指摘しています。
・(とある)コンドミニアムでは、47%がトラストや管財人、LLC(訳注:有限責任会社)、企業によって所有され、わずか19%のユニットの所有者だけがシアトルでの投票権を持っていたのだ。(訳注:つまり実際に住んでいる)
・シアトルの高級不動産を所有するLLCの3%は…情報の秘匿性が高い州…で形成されている
https://inequality.org/great-divide/who-is-buying-seattle/
実際にシアトル市のあるキング郡が開示している情報をタワマン開発が進む地域のいくつかの街区で調べてみたら、近年開発されたタワマンは多くがLLCの所有でした。
まあこれはシステム上当然なことなのですが、上記で指摘されているように情報の秘匿性の高い州で登録されているLLCが複数ありました。
(個別のユニットの所有者がLLCかどうかが「住んでいるかどうか」を確認する上でのポイントだと思いますが、確認した範囲では高額なユニットにそのような所有形態が多かったようです)
このような動きは、もともとIT企業など、高額な報酬を手にする人たちの流入で住宅価格が上がってきていた中で、投票権を持たない=シアトルに住んでいない人たちが「資本貯蔵所」としてシアトルを用いることで、住宅価格をさらに上昇させていることになります。
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20年前と比べてすごく安全になった地域です
誰が都市を所有しているのか?
また、「グローバル・シティ」の著者であるサスキア・サッセンはリーマンショック後の都市の所有のありかたについて、ロンドンの中心部が外国資本に買われていることを参照しながら、次のようなことを指摘していました。
それまでは既存の建物を買収するということが多かったが…2008年以降(訳注:リーマンショック後)は建物を買ってもそれを壊し、高層の、ラグジュアリーな建物、オフィスやコンドミニアムを建てるようになった。
…
新しいオーナーたちは、パートタイムの住民で、とてもインターナショナルだが、だからといって文化の多様性を代表しているわけではない。むしろ、このオーナーたちは「成功」というグローバル・カルチャーを代表しており、とても同質なのだ。
所有はしているけれど、住んではいない、ということは地域への関与が非常に薄いということになりますが、大都市のタワーマンションなどはどの国も同じような状況が起きていると思います。
アメリカの場合は情報がかなり公開されているので、そういった状況も見えやすく、分析しやすいのですが、日本では実態を知る手がかりがデータとして見えにくいです。
シアトルなどアメリカの大都市で起きていることは、住宅不足に拍車をかけるような状況であり、(アメリカの場合は州外国内資本が多そうですが、サッセンは上記の記事内で「投資が国内だろうが国外からだろうが、都市へのインパクトにはあまり変わりが無い、それより…スケールの問題だ」と言っています。確かにそうですね)日本のように人口減少局面であっても、住宅が資本蓄積のための貯蔵庫になってしまえば同じような困難に直面する(すでにしている?)かと思います。
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