見出し画像

ポートランド(1):現在どうなっているのか(パンデミックを経て)

1.理想のまち、ポートランドの今(2021/11)

ポートランドは理想の都市としてよく名前があがります。確かに美しい都市で、路面電車など公共交通期間が充実しており、非常にウォーカブルです。人々もシアトル同様に寛容な価値観をもつ人が多く、政治的にも先進的(プログレッシブ)な政策を行う都市です。シアトルよりも都市のサイズが小さいことから、のんびりとした雰囲気も魅力的なところです。

ただし、2020年〜2021年はシアトルと同様にポートランドのダウンタウンでも暴動が起き、非常に困難な状況がありました。シアトルも政治的な背景に影響され、警察予算の削減やホームレスキャンプへの対策の遅さが目立ちますが、シアトルと政治的にも類似し、よく比較されるポートランドは今、どうなっているのでしょうか。

(1)シアトルからポートランドへのアクセス

シアトルからポートランドへは、バス、アムトラック、車、飛行機などでアクセスが可能です。飛行機は1時間、その他は大体3時間半〜4時間で着きます。今回はアムトラックで行くことにしました。アメリカの列車ですので、それほど便数は多くなく、一日4便程度です。
今はオンラインで予約した後QRコードが発行されるので、そのままスマホにダウンロードして乗り込み、車掌さんが途中でQRコードを読み取りに来ます。
暗い道を歩かなくて良いようにスケジュールを選んだので、結果的にあまりスピードが早くないコミューター・トレインになりましたが(この場合WIFIがありません)結果的に時刻表より30分早くポートランドに着きました(所要時間予定4時間→3時間半)。

ポートランドのユニオン駅

(2)ポートランドの駅前

シアトルのキング駅から列車に乗り、ポートランドのユニオン駅に着きます。ユニオン駅周辺のチャイナタウンの治安が要注意であることは事前に調べていましたが、ポートランドの駅を降りてライトレールの駅に向かう途中(徒歩3分程度)に見たのは、ホームレスのテントが並び、ゴミが散乱する状況でした。ポートランドに来るのは3回目で、これまでもシアトルから列車で来ていましたが、このような状況はこれまで見たことがなかったので驚きました。

ホームレスの方々を支援する「トランジッション(移行)プロジェクト」による
施設の横の歩道上にテントが並んでいます

(3)ポートランドの中心部

ポートランドの中心部にもいくつかのホームレス・キャンプが点在しています。シアトルではすでに中心部や住宅地ではそれなりに撤去と支援が進んでいましたが、ポートランドはまだかなり目立つ状態です。
また、去年の暴動の影響もあり、板張りされているところが目立ち、中心部は日没後特に注意して歩く必要があると思います。(緯度が高く、冬は4時半くらいから真っ暗になります)

ダウンタウンにいくつか板張りされたストアフロントが残っています

2.どうしてポートランドがこうなったのか

店員さんなどは、ポートランドのイメージそのまま、フレンドリーで親切な印象です。公共交通は相変わらず便利で、一日5ドルで乗り放題など素晴らしいシステムだと思いますが、ウォーカブルな都市づくりには歩行者の安心感が担保されていることが第一条件だと感じます。車で移動する方が治安という意味で安全であれば、そちらを選択するようになるでしょう。

もっとも、歩いているうちに最初の衝撃は薄れ、徐々に徒歩での移動に抵抗は無くなりましたが、ところどころ歩道上にテントや生活用品が置かれていおり(シアトル中心部ではさすがにテントが歩道を占拠している状況はまれです)、そういったところでは周辺状況を確認しながら歩くような感じです。
開発とジェントリフィケーションが進み、高級化されたコンドミニアムが並ぶ「パール・ディストリクト」でも、ホームレスキャンプの残置や治安の悪化の問題が起こってきました。

基本的には相変わらず魅力的なまちです。
コロナ対策の特例で「Safe Streets Initiative」の一環として歩行空間をカラフルに拡張しています

しかしポートランドは全体的には公共交通システムも、都市デザインも人も、ユニークな文化もすばらしいまちです。あこがれのまちであるポートランドからなぜホームレスキャンプが無くならないのか、なぜ店舗前面の板張りが残るような状況になっているのか、様々な報道や分析がなされています。詳細は次に示したいと思います。