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シアトルのネイバーフッド(2):サウス・レイク・ユニオンの開発史①

サウス・レイク・ユニオンはダウンタウンの北、アマゾンのヘッドクォーターがあることでも知られる、アメリカ屈指の「イノベーション・ディストリクト」です。ダウンタウンに隣接し、以前は低未利用地がつづくエリアでした。住民もほとんどいなかったようなところです。

無題 - 2021年10月21日 17.31 3

ここが今、シアトルで最も開発が盛んな場所となっており、現在も周辺ではタワーマンションが絶賛建設中です。
サウス・レイク・ユニオンではどのように開発が進んできたのでしょうか。

幻の「シアトル・コモンズ」

1990年代:ダウンタウンからレイクユニオンまでの間の低未利用地が拡がるエリアに、今後の開発の起爆剤として「シアトル・コモンズ」という大規模な公園を含む計画が作られました。その計画実行のための固定資産税の徴収に関して、是非を問う住民投票がシアトル市によって行われた結果、市民から却下されてしまいました。(1995年と1996年の二回住民投票で却下されました。当時ポール・アレン(マイクロソフト創業者)が計画に協力し、多額の融資を申し出ていました。)

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シアトル・コモンズの当時のドラフトプラン(Seattle Municipal Archives, CC BY 2.0 ウィキメディア・コモンズ経由で)

この計画の中でシアトル・コモンズとして74エーカー(30万㎡くらい)の公園が計画されていた部分が現在どうなっているかというと、中心軸はメインストリートとなり、そこにストリートカーが走っています。湖沿いの公園は整備され、現在はレイク・ユニオン・パークとなっています。(ドラフトプランは南北逆になっています)

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湖沿いのレイク・ユニオン・パーク

確かにこのドラフトプランでは、当時立地していた小規模な事業者を広範囲に追い出すことになってしまいそうで、市民が税金を聴取することの是非だけでなく、そういったことを意識して投票したということもあるかと考えられます。(結果として開発が進んで以前の事業者たちはいなくなっていますが・・・。)
シアトル市は周辺部には大きな公園がたくさんあるのですが、ダウンタウンにオープンスペースが少ないので、もしできていたら確かに下記の指摘のように「セントラル・パーク」のような貴重な場所ともなっていたでしょう。そういった意味では、計画が実現しなかったのは残念な部分もあるのかもしれません。

ただ、アメニティとしての公園が周辺の価値を高め、開発を促進させるという考えで計画されたのですが、シアトルは特に民主的手続きを重んじるところでもありますし、1995年でもさすがに少し計画が前時代的であった部分は否めないと思います。また、ここまで大きな公園は(デザインにもよりますが)逆に安全面(治安)からの不安を高めていたかもしれません。今のサウス・レイク・ユニオンは安心して歩けるところにはなっていると思います。

このようにシアトル・コモンズ計画はうまくいきませんでしたが、ポール・アレンは次の計画を始めました。そこから開発がさらに進められていきます。