グリーン・インフラ(もしくはネイチャー・ベースド・ソリューション)の重要性
シアトル市は地震が起きる地域でもあり、ワシントン州は津波の危険性もあります。ワシントン大学の先生と話していたら、近年防災におけるグリーン・インフラへの着目が特に進んできているとのお話がありました。
特に、災害対応をする連邦政府の組織であるFEMA(緊急事態管理庁)が、ネイチャー・ベースド・ソリューション(自然ベースの解決法)の考え方を示し始めたとのことで、グレー・インフラ型の考えが強かったところが、グリーン・インフラの考え方を導入し始めているようです。
FEMAが「BUILDING COMMUNITY RESILIENCE WITH NATURE-BASED SOLUTIONS(自然ベースの解決法でコミュニティのレジリエンスを構築する」というものを2021年に出しています。その中では、自然ベースの解決法によるエコシステム上の利点、経済的利点、社会的利点などが示されています。
中でも経済的利点ですが
とあって、面白い結果だなと思いましたが、確かにシアトルでも大きな公園(シュアード・パークなど)の近くは豪邸が並んでいます。
シアトルには「グリーン・ファクター」というランドスケープの質を高めるための基準があるようで、ゾーニングの場所によって満たすべき条件が決められているようです。(https://www.seattle.gov/sdci/codes/codes-we-enforce-(a-z)/seattle-green-factor)これによるとランドスケープのデザインは最低限の条件に達していないといけないらしいのですが、その条件(スコア)を満たすためのメニューが以下のようになっていて、そのことがグリーン・インフラの形成につながっているようです。
良いランドスケープは犯罪防止にもつながるとの記述もありますが、場所の空間としての価値を高めた上で、新規開発がグリーンインフラのネットワークのひとつとしてつながっていくことができます。
1つの優れた事例がThe Thornton Creek Water Quality Channelです。
これは、クリークに流れ込む水の速度を落とし、きれいにするための装置で、ノースゲート駅まで今年LRTが開通したのですが、交通のハブとしてのノースゲート周辺の開発の一部として2009年に完成したものです。(City of Seattle,"Thornton Creek Water Quality Channel FINAL REPORT"October 28, 2009より)地形を活かしたランドスケープがつくられ、水質をきれいにする機能だけでなく、集合住宅の住環境を向上し、パブリックスペースの役割も果たしています。
2021年、シアトル市は夏に摂氏40度を超す熱波が来たり、郊外でも洪水が多発していました。気候変動を考えると、こういった取り組みの重要性はより高まっていきそうです。