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公演情報公開までの経緯と(現時点で)配信公演をやらない理由

所属している劇団、gekidanUで毎年行っている野外劇の全情報公開と予約開始を本日6月15日に行いました。
(良かったら下記ツイートRTしてくださいまし。)

●公開スケジュールについて

本来の予定ですと、6月1日のタイミングに全て公開/予約開始とする予定でしたが、少し後ろ倒し、1日はメインヴィジュアルの公開のみとしました。

この時点で既に基本的に公演自体の要項はまとまっていたので、公開自体は出来たのですが、今年やるにあたって一つ重要なことをクリアしてから、ということで待っておりました。

それは「公演実施ガイドラインを近隣にご説明し、確認してもらう」ことでした。
TwitterやHPの写真で見ていただければ分かりますが、野外と言うか、本当に住宅街の中でやるので、近隣の方々のご理解がなければ実施は不可能です。

この7年間活動を続ける中で、顔見知りの方も増えるとともに、最近は建込みを始めると「今年もやるんだね」というような声を沢山戴くようにもなり、ご期待や応援などポジティブな反応を肌で感じることが多くなりました。
続けていくことで少しはこの場所に何かを残せてきてるのかなと思っています。

ただ今年はこの状況で、企画は進めつつも、ご理解を戴くのは相当厳しいんじゃないかなと思っておりました。
ただそれでもこの場所で続けていきたい意思と、改めて感謝の想いをお伝えする意味でも、制作したガイドラインを持って主宰の遠藤が隣接する商店会の方にお話に伺ったところ、例年と変わらぬ応援をいただきました。
これは本当に嬉しかったです。正直この時点で中止要請をいただいてもおかしくないと思っていました。

ただもちろん、今後の状況に合わせて判断は必要になりますし、そんな近隣の方々に上演することで多大なる不安を与えて公演を行うのは本意ではないので、注視しながら今後も配慮を怠らずやっていきます、という想いを込めて、ガイドラインの冒頭、基本方針は下記のように記載しております。

野外という⾮密閉空間であっても、令和2年5⽉ 14 ⽇に公益社団法⼈ 全国公⽴⽂化施設協会が発表した「劇場、⾳楽堂等における新型コロナウイルス感染拡⼤予防ガイドライン」に準ずる形で、対策を怠らずに⾏っていきます。

また、我々gekidanU では、2012 年の活動開始より拠点とする南千住での野外劇を、近隣の皆様のご協⼒と多⼤なるご理解をいただきながら⾏ってまいりました。創作と地続きになった「まち」の存在なしでは我々の活動は⾏えません。⼼より感謝しております。

本公演につきましても、公演企画及び情報公開に際して、本ガイドラインを⽇頃⼤変お世話になっております「南千住仲通り商店会」様と確認の上進めさせていただいております。

皆様のご理解と応援の下、特殊な公演環境で実施させていただけていることを改めて認識の上、近隣の皆様に不安を与えることのないようご説明、配慮を尽くした上で実施してまいります。

それがなされなかった場合及び、近隣の⽅々の要請があった場合は、⾃治体の決定有無に関わらず、協議の上公演形態の変更や中⽌措置を検討致します。

※全文はこちら
https://gekidanu.com/wp-content/uploads/tomurai20_guideline.pdf

●公演形態について

企画段階で考えなければいけなかったのは公演形態でした。
東京の劇場も徐々に独自のルールを制定していますが、どうしても定員を減らす必要があり、公演を実施する団体側もチケット料金設定や配信公演への移行/併用など、様々な方法を検討しています。

野外の青天井の上演になり「3密」はありえない我々でも同じように、定員の検討や上演形態についての会議を4月末から持ち始めました。

まずは定員を減らすことでの予算算出から始めて見ると、自前のスペース故に「劇場費」という最も大きくのしかかってくる要素がなく健全経営が可能な我々でも、理想とするチケット料金だとかなり厳しいことが分かりました。このときは一同なかなか息を呑んでしまいました。

その分のカバーをどのように考え、どう対応するか、というところで「配信でもお金を取ればよいのでは」という話も出ましたが、話し合いの結果、行わないという決定をしています。

理由としては、
「配信で我々が提供したい『体験』は観客にお渡し出来ないのではないか…」というところに尽きます。

こちらに関しては、
「芝居はナマで観てナンボや!」みたいな精神性の話では決してなく、上演環境のあまりの相性の悪さと、自分たちが夏の野外劇で観客に提供できる価値を考えたときに判断した形です。

「上演環境」については、
我々は十字路の一角にある駐車場のようなスペースで公演を行っているので、それはもうものすごくいろんな音や光や匂いが「演劇」の外側から入ってきます。
必ず特定の時間に3台続けてやってくるスイミングスクールのバス
とか、近所の居酒屋から出てきてコップ酒片手に楽しそうに一人で喋っているおとうさんとか、たくさんいらっしゃいます。

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文字にするとすごいですが、そういった環境を取り込んで折り込んでその場を成立させられるように芝居を作っているので、現場で観てる分には意外と気にならなかった、という声を多数いただきます。

ただ、これを映像で観るとどうでしょう、ただただノイズのまま、すっごく邪魔な要素にしかならないのです。びっくりするほどに。

昨年の野外公演の映像を無料公開にしてますが、これはカメラ台数が足りず家のベランダと地上の会話などを追いきれていない等の事情だけでなく、クオリティとして記録映像以上のものになりえないな…という気持ちからです。

※一応映像でもラストシーンとかはおお…となるとは思います。

おそらく本当に映像として展開したいなら、客席スペースに複数カメラを置いて、しっかり撮影したものをきちんと編集して、「そういう映像作品」としてパッケージしないといけないなと思っていて、ゲネプロの映像を撮影・編集してみる、というのは検討中です。

「価値」の部分ですが、やはりどんなに芝居の内容を作り込んでも、「野外で夏に南千住なんて東京の中でもなかなか行かない駅の少し歩いた住宅街で芝居を観る」という体験を、内容とともにご提供している団体です僕らは。

現状配信でそれに匹敵する体験は提供できないなと思っています。
もしかしたら、もしかしたらいずれはもっとがっつりこれを考えなければならないのかもしれないけど、今はこの考え方です。

という議論の末、「一回あたり前回の満席74名の半分程度の動員での公演実施」を決定し、チケット料金を単独公演としては初の3,000円、加えて特典付きチケット5,000円を初めて設定しました。
まあ相場からしたら安い方なのですが、僕らとしては少しソワソワしちゃいます。

どんなふうに初日を向かえて、どうやってお客さんに観劇後の真夏の南千住駅の帰り道を満足げな顔で帰ってもらうか、いろんな方向から考えています。

すでにご予約をけっこう頂いております。本当に嬉しいです。
ありがとうございます。
個々にご事情等あるかと思いますし、感じていることもあるかと思いますが、もしよろしければ応援していただければ嬉しいです。

観に行きたいなと思った方、是非是非。
気になる部分はお気軽にお問い合わせください。

公演詳細ページ
https://gekidanu.com/tomurai20

やるぞ〜。
よろしくお願いいたします。

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