備蓄から広がる夢想

 昨日思い立って備蓄のチェックをし、一通り揃えて、あとは懐中電灯(ひとり1本、と考えて2本買い足す必要あり)、毛布がわりになるシート(これもあと2枚必要)、などとリストを作り、今日あたり買いに行こうかなと思っていたのだが、ふと思い立ってアマゾンで調べてみると、何でも売っている。というわけで、懐中電灯も毛布代わりのシートもここで注文した。ついでに「えいようかん」も買ってみた。賞味期限は5年だそうだ。揃え出すと、どんどん「危機に強いシステム」ができ上がっていくようで、心強くなる。というわけで朝からネットショッピングに熱中した四連休最後の一日であった。

 それはともかく、非常用のグッズというのは、サバイバル旅行に使えるグッズでもある。車が運転できるようになった今、これらのグッズを防災バッグから拝借してちょっと遠出してみるのもよい、などとふと思った。

 村上春樹『騎士団長殺し』で、主人公の「私」は妻から「これ以上一緒に暮らしていけない」と告げられ、身の回りのものをバッグに詰め、赤いプジョーに乗って家を出る。そのあと新潟、山形、秋田、青森、北海道と旅をしていく。夜は目についたビジネスホテルか旅館に泊まる。この生活は一カ月半続く。やがて車の寿命が尽き、電車で東京に戻ったのち、友人に電話をかけて泊めてもらえる場所を尋ねたところ、父親の住んでいた家を勧められ、そこで絵の「騎士団長」に出会うのである。

 この本が刊行されたのは2017年2月で、まだ私の運転技術は「あくまでも近場」をちょろちょろ行き来するにとどまっていた。しかしこの部分を読んだとき、なんて自由なんだろう、と憧れに近い気持ちを抱いた。村上春樹は『ノルウェイの森』でも、主人公のワタナベくんに旅をさせているが、こちらは電車の旅だ。それにひきかえ、車なら荷物も積んでおけるし、時間の制約も受けにくい。これはいい、と思った。この『騎士団長殺し』に影響を受けたから、というわけではなく、あくまでも「いつでも奈良に行けるように」と練習を積んだわけだが、とりあえず、ある程度の距離なら移動できるようになった。周りに人がいなければ、強盗に襲われることもない(中途半端に人がいるのが怖いのである)。気候もよくなったことだし、非常食、非常グッズを携えて、「常識が許す限りのドライブ」をしてみるのもいいなと密かに目論んでいる。


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