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朝ドラ『舞いあがれ!』の久留美ちゃんの父

 朝ドラ『舞いあがれ!』のメイン脚本家、桑原亮子さんは、阪神淡路大震災ののち、初めてPTSDということに着目して人々を支えた精神科医、安克昌さんをモデルにしたドラマ『心の傷を癒すということ』(安さんの著作の題名をそのままタイトルにしている)の脚本を担当されています。人の傷み、悲しみに丁寧に寄り添った脚本を書く方で、『舞いあがれ!』も、始まりはそんなドラマでした。それが、航空学校編で、一時的に別の脚本家になったことで、ちょっと作風が変わり、その後また桑原さんの本に戻って、再びきちんとしたドラマになっていたところでした。
 ところが、今週一週間はまた別の方が担当される、ということで、月曜日から色々と不思議な展開になっています。昨日の放送は、主人公の幼馴染で、看護師をしている久留美ちゃんが、医師と婚約し、結婚の挨拶のために両家顔合わせが行われる、というストーリーでした。ところがその場に現れたのは先方の母親だけで、久留美の父が定職に就いていないことで嫌味を言い散らし、お父さんは娘の幸せのために先方の母親に土下座をし、さらにはラグビー経験者ということで足にしがみついてタックルのようなことを仕掛ける、という薄気味悪い話が繰り広げられました。そして、今朝はその続きで、婚約者の医師、八神くんが、久留美ちゃんのお父さんに仕事を紹介し、八神くんも父も「この会社に勤めたら文句を言われることもない」と言い、久留美ちゃんが怒って婚約を願い下げる、という展開でした。

 ドラマの好き嫌いは個人の趣味なので、今回はそこは放置して、久留美ちゃんと父親の関係について、思ったことを書きます。

 まずこれまでの流れを整理しておくと、
1)久留美ちゃんは父一人子一人の家庭で幼い頃から家事をし、進学の際も授業料免除を申請し、やっと看護師になった。
2)父は気はいいかもしれないが、金銭面で娘の生活を整える甲斐性はない。
3)医師の息子と結婚するにあたり、この点がネックになって先方の母からさんざんな嫌味を言われ、父は自分が久留美の幸せを妨げていると思う。
4)正社員で事務職の仕事を婚約者の八神さんが紹介し、現在の肉体労働のアルバイトより楽だし、いい会社に勤めれば八神さんの両親がごちゃごちゃ言うこともないと父も八神さんも考える。
5)久留美ちゃんは、そんな仕事に就く必要はない、と言って婚約を破棄する。

ということです。
 多分ドラマは、「お父ちゃんはお父ちゃんやねん!人間にはダメな生き方とかないねん!あたしはそんなお父ちゃんが好きやねん!」と持っていきたいのでしょうが、学費に関するプレッシャーを感じたことがある身としては、
1)娘の幸せがどうのこうの、というなら、生活と学費の面倒はちゃんと見ろ。
2)肉体労働のアルバイトよりも、正社員の事務職の方が、金銭面でも健康面でもいいに決まっている。
3)しかし、紹介された仕事の方がいい、というのは、あくまでも自分と娘のためであって、結婚を許してもらう条件のため、というのは変。
4)親子の情というのはまあ色々あるだろうとは思うが、生き方として、いい生き方と変な生き方はあり、久留美の父の生き方はいいとは言えない。
5)八神の親はもちろん、本人もちょっとピントがずれているので、婚約破棄はすればいいが、それをダメな父への思いから、という展開はちょっと変。
という気がします。

 私なら、迷惑をかける父親からはとっとと離れて自分の幸せを摑みにいくだろうなー(それは八神との結婚ではないけどねー)と思わずにはいられませんでした。


 


 


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