豆腐屋のひとり言 神楽岡は坂の町
吉田神楽岡は坂の町だ。
京都は盆地なので中心部は平坦なのだがお盆の縁(へり)のほうは畢竟坂が多くなる。
今出川通を東へ、大文字山が大きく見えだす頃右手にこんもりとした小山が現れる。
吉田山古くは神楽岡と呼ばれ節分で有名な吉田神社の神域でもある。
何事にも大層な歴史がくっつく京都の例に漏れず神々が神楽を催したとか足利尊氏が布陣して南朝と戦ったなどという話も残っている。
この吉田山の東麓は神楽岡と呼ばれる閑静な住宅街となっている。
車道から少し山手に入ると昭和初期にタイムスリップしたかのような家並みに出会う。
昭和の実業家、谷川茂次郎が建てた銅板屋根の借家群である。
谷川茂次郎は吉田山山頂にカフェ「茂庵」のもととなった茶席を8つもを建て大茶会を開いた数寄者だ。
京都大学の教官等が住んだというこの谷川住宅群は京都市の景観重要建造物に指定されていて現在では仏師の工房などもあり、静かに歴史を感じさせてくれる。
坂と階段で構成された街並みは車の侵入も許さず、大通りからほど近いとは思えない静けさである。
公家の別荘地だったという歴史にもうなずける景勝の地だ。もっとも、お公家さんの時代には大文字はまだ無かったので東山連峰の優美な眺めを楽しんだのであろうか。
「布団着て寝たる姿や東山」 嵐雪
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