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【先生向け】 吃音リッカムプログラム、やってる?どうやってる? (※ 100%個人の見解です)

こんにちは。
言語聴覚士のてらだななです。

主宰していることばの相談室ことりでは、吃音のリッカムプログラムを継続的に実施しています。
ワークショップが日本国内に入ってきておおよそ4〜5年(?)、まだまだ実施できる機関は少ないようです。
※現在、コロナの影響でワークショップは開催されていません。

というのも、リッカムプログラムはさまざまな制約があります。

医療機関や公的機関がリッカムプログラムを導入する際の難しさ

公認ライセンスを出している協会は、

1.吃音が0になるまでは毎週、0になってからも経過観察で1年間の通院(通所)を義務付けている
2.3日間のワークショップに全日参加した言語聴覚士のみ実施可能
3.家庭での毎日の記録と毎日の10〜15分の練習(以下、練習タイム)が必要
4.対象年齢は就学前まで(6歳以下)

というルールを設けています。
実際問題、家庭への負担がかなり大きく、継続が難しいことが多いのも実情です。

そのほかにも、お子さん本人に対して吃音を知らせたり、言い直しを求めたりというタフさを求められるプログラムでして、メンタル的な安定が前提になっていると感じています。

さらには、医療機関で実施する場合には週1の予約枠を確保することが難しいです。ことばの発達を相談できる機関で受け入れているのは、吃音のある未就学児さんだけではありません。小学生の吃音のお子さん、自閉症や知的障害などでことばの発達が気になるお子さん、発音の指導を受けたいお子さんなどさまざまなニーズがあります。

リッカムプログラムを受けるための予約枠を確保するためにそのほかの方の予約枠や通院回数を制限します、というのは通りづらいです。

たとえば自閉症のお子さん向けのESDMなどのプログラムも、週1〜5回ほどのセラピストとのマンツーマンセラピーを標準としています。
公的機関でこうした1ケースあたりのセラピストの時間拘束が長いプログラムの導入を検討する場合、この公平性の問題が必ず課題として上がってくるでしょう。

批判があるならばやらないべきか?

こうしたさまざまな課題はあれど、リッカムプログラムの有効性や示されているエビデンスの規模は(※効果検証が続いているものの)、見過ごせないものです。

そして、日本国内での通訳付き開催歴が浅く、ライセンスを取得している日本語話者の言語聴覚士の数は非常に限られています。
せっかくライセンスを取得したのにさまざまな事情で実施が困難な施設に勤めるSTも多いことを鑑みると、実施できる環境にあるSTがリッカムを実施しないのは社会全体の資源を効果的に活用しきれていないということでもあります。

※ 国内では酸っぱい葡萄理論も入り混じるこの状況下、リッカムプログラムに対し、どちらかといえば否定的な意見を持つ専門家の先生方も少なくありません。
私個人の考えとしては、侵襲性や安全性を充分に考慮した上で、選択肢や取れる手段が目前にあるならば少しでも前に進んでいくべきなのではと感じています。

リッカムプログラムの是非を中立的に議論できるようになるのは、選択肢のひとつとしてそのほかの選択肢との相対性が確立したのちーーーつまり、リッカムを棄却したのちの選択肢が提案されるようになった、もうすこしのちの時代だと思います。

リッカムプログラム、JSTART−DCM、両プログラムについて、一刻も早い講習会・研修会の開催を心待ちにしております。

以下は、言語聴覚士の先生向けの内容です。吃音を持つお子さんのご家族・当事者の方向けの内容ではありません(読むことを禁止するものではありません)。

情報と知識は公費負担で手に入る世の中になるべき

お子さんに吃音が現れた!となった場合、多くの養育者に必要なのはまず「情報」、次に「知識」です。

情報とは、吃音を相談できる機関や社会資源がどのていどあるのか。
知識とは、吃音に対してどのように対応するのがよいのか。

個人的な意見としては、情報については無料やそれに近い形で、知識については公費負担で手に入るべきだと考えています。社会全体に情報がもう少し流れていないと、言語聴覚士のマンツーマンのカウンセリングをその時間に当てなければならず、混み入ったセラピーの話をする時間が圧迫されてしまいます。初期対応については、吃音に詳しい言語聴覚士や吃音専門医師以外の医療福祉専門職の先生方による対応の充実もすすめていく必要があると思います。

週1回通所マストをどうしているか

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