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ガンダ人の夫はキノコを食べない(キノコ族の話ーその1)

国際結婚をしていると、「ダンナさんは普段何を食べているの?」と尋ねられる事がよくあります。質問する方は、会話の糸口として聞いてくれるのかも知れませんが、「刺身とキノコ以外は何でも食べるよ」と正直に答えると少々話が長くなります。質問した人がどの程度夫の食生活に興味を持っているのかわからないので、なるべくシンプルにまとめたいですが、キノコを食べない背景の説明は長くなりがちです。食べない理由が、食わず嫌いとか、好き嫌いとかでは無い事を、きちんと伝えないと、先々に問題の種を残す可能性があるからです。

「刺身を食べないアフリカ人」は想定通りの答えなのでしょうけど、「キノコを食べないアフリカ人」は、大抵の人から、疑問を持たれます。

「アフリカにはキノコが無いの?キノコが嫌いなの?」と不思議がられます。

「アフリカ人もキノコは食べるけど、夫はキノコ族だから、文化的な理由で食べちゃいけないの。」と答えると、更に不思議がられます。そしてキノコ族の説明に入りますが、あまり長く語っても、相手はそんなに関心を持っていないかも知れないし、そもそも、自分でもキノコ族への理解が十分ではないので、手短にしようと考えると、ついつい、不親切な、中途半端な説明になります。

「ウガンダの中でも、うちの夫はガンダ人で、ガンダ人には、クランていう氏族みたいなグループが50種類位あって、うちの夫はキノコ族なの。キノコ族はキノコを食べてはいけないんだって。」

なるべくシンプルに説明しようとすると、こうなるのですが、ほとんどの皆さんは、冗談を言われているのか、真面目なのか判断できず、反応に困るようです。ここで、これ以上キノコ族について深追いをしない人と、もっとちゃんと理解したいと思ってくれる人の2パターンに分かれます。興味を持って理解したいと思ってくれた人に対しては、ガンダ人のクランについて説明したいのですが、上手に説明できたことがありません。そこで、クランの事について、知りたいと思ってくれる人々の為に、そして、自分の為にも、noteにて、まとめてみようと思います。

ブガンダ王国とクラン

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ウガンダの中には40位の部族があり、それぞれに異なるカルチャ―を有しています。その中でガンダ人は、人口も、居住している面積も最大で、王族も現存しています。ウガンダ共和国の首都、カンパラはブガンダ王国の都でもあります。上の画像は、10年近く前に、ブガンダ王国についてプレゼンをした時に、作成したパワポの1ページです。地図の赤い部分がブガンダ王国です。1894年、イギリスがウガンダを保護領とした時に、保護領の中心地をブガンダが支配していました。ブガンダを意味するスワヒリ語の「ウガンダ」が保護領の名称とされたそうです。イギリスからウガンダが独立した後、1966年に、オボテ大統領によってブガンダ国王が追放され、王政が廃止されましたが、1993年にムセヴィニ大統領によって復活されました。亡命先で客死した元国王の世継ぎであるロナルド・ムウェンダ・ムテビ2世が、36代国王として呼び戻され、伝統的、文化的なリーダーとして即位しました。

実際の政治にはブガンダ国王は携われませんが、文化的にであっても、ガンダ人を纏めるには、クランという、同じ祖先を持つ人々のグループ(氏族)は欠かせません。ウガンダ共和国独立前のブガンダ王国の社会は、クランに基づいて統治されていました。国王が各クランの長を直接支配下に置き、クラン内では、各クランの長が裁量権を有していました。

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ブガンダ王国の組織イメージです。国王(Kabaka)の下にクラン(Clan)のリーダー、クランの下位組織としてSsigaからLunyiririへとより小さなグループになり、最小単位はそれぞれの家族です。

ガンダ人であれば、父親の属するクランのメンバーとして生まれ育つので、クランに属さないガンダ人はなく、必ずいずれかのクランの一員になります。自分が誰の子孫か、どの家族に属しているかという認識は重要で、正式に自己紹介を求められると、正真正銘のガンダ人ならば、自分の名前と、父親の名前と住んでいる地域、父方の祖父の名前と、亡くなっている場合は、墓のある場所と、クランを述べる事が求められます。

例えば、義父のクランがキノコ族だったので、夫も、兄弟姉妹も父方の叔父、叔母もキノコ族ですが、義母は、心臓族出身で、結婚してもクランが変わる事はなく、心臓族のままです。夫に「ガンダ人らしく自己紹介してみて」と頼んだところ

「私は、カウェレロナルドです。私のクランはキノコです。父はフレデリックナムテテです。ンサンジに永眠しています。祖父はマイケルカティンボです。祖父もンサンジに眠っています。」とウガンダ語で披露してくれました。

クランのトーテム(シンボル)

ブガンダ王国のウェブサイトに現在52のクランが記載されています。ブガンダ王政ができる以前には土着のクランが5つ存在していたそうです。それが52に増える経緯はガンダ人が他所の土地から移入してきた歴史と結びついています。

ウィキペディアのブガンダのクランのページに具体的なクランの流入の時期と共に、クラン名の記載があります。それぞれの名前の英訳にポインターをあてると、クランのトーテムの画像を見る事ができます。トーテムとはそれぞれのクランの呼び名になっている動植物等で、そのクランに属するメンバーは、トーテムを自分たち家族のシンボルとして尊重しています。トーテムが食べ物であった場合、クランのメンバーは食べる事ができません。夫はキノコ族なので、トーテムはキノコ。キノコを食べません。残念ながら、上述のウィキペディアのリンクからキノコ族のキノコ画像は見られませんが、他にどんなクランが存在するか見る事ができます。レオパード族のレオパードの画像や、カワウソ族のカワウソも見られ、見たことも聞いたこともない動植物もクランになっている事がわかります。

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例えば、チベットキャット族というクランがあり、シンボルは上の写真の動物だそうです。

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コロブスモンキー族もあるそうです。どうせなら、かわいい動物のクランに生まれたいですね。自分で選ぶ事はできませんが。

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因みに、自分、ナントンゴはモンキー族ですが、モンキーは上の画像のベルベットモンキーだそうです。ちょっと可愛いくてよかったです。

では、何故、クラン名は動植物なのでしょう。何故、ナントンゴは日本人なのに、モンキー族に入れたのでしょう。という話もしたいのですが、既に長くなりましたので、次回にしましょう。




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