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メランコリックの感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川、シネコンなのにこういう小規模な映画をちゃんとやってくれるの本当信用できる。

とにかく評判が良いので全く前情報なしで観に行ってきた。

うだつの上がらない主人公がちょっとしたきっかけでジワリジワリと人でなしの世界に入っていってしまう様子をユーモアをたっぷり交えながら描いていく古谷実の漫画とかに近い雰囲気の映画なのだけど、役者さんはみんな素晴らしく存在感あるし、話もテンポが良くかなり楽しめた。

東大卒業したのにやりたい事がない主人公、「凪のお暇」の市川実日子の役がそういえば同じ様な役だったけど、こういう学歴が高くても人生を良くする要素にならない、というか学歴が高い事が逆にコンプレックスになるというキャラクターって今のトレンドなのかな?

彼のキャラクター造形からして結構変わってて、死体処理を初めて目撃した時は驚いてたけど、それ以来手伝わされだすとお金を貰って働くことに生き甲斐を見出していく。人が目の前で死んでいる事実より、自分の人生の変化に対する期待の方が大きい感じ。
意味が分からない位に可愛い元同級生が意味が分からないけど彼女になったりして勝手に人生の絶頂になっている様子が面白い。

ただ当然そんなゆるーくて楽しい状況が長続きする訳もなく、本人が知らない所でどんどん闇に引きずり込まれていく。

主人公に「あんた今相当ヤバいですよ」って事がようやく伝わる所で、緊張感よりどちらかといえば「やっと気付いた、、、」というコミカルさを強調する会話シーンになっているのにかなり笑ってしまった。

ラストのヤクザ殺すぞ展開も素晴らしくて、松本君との友情が深まっていく様子が微笑ましいし、あの銭湯の店主のおじさんが裏切る展開も「裏切る」ということの展開の面白さより、変化に対応出来ない人だったという弱さが明らかになるのにグッときた。そして土壇場でどっちつかずの選択をしてしまう彼を罰するのが、これまで何かを自分で選ぶ事を放棄してた主人公なのもとても好きだ。

主人公はこれから人を殺した重みを背負っていかなければいけないと思うけど、劇中では描かれず「とりあえず今を楽しむ」と軽快に終わってくのも個人的な好みとは違うけど嫌いじゃなかった。

彼女役を演じた吉田芽吹さんがまぁ可愛い。笑ってしまう位あざとい酔っ払い方が可愛い。それだけに彼女の生活をもっと見せてほしい位だった。こんな娘が無条件であんな主人公に惚れるなんてファンタジーだと思うけど今回のキャストさんの中で一番印象に残る人。

あと松本君。主人公と同じく完全に舐めた目線で見ていたので、殺し屋描写に入ってからのキレのある動きには普通にビックリした。あそこの銭湯で働くようになって一番貧乏くじを引いているのは彼だったりする。主人公から人生における楽しみとか生きがいみたいなものを少しずつ教えてもらっていくシーンとかよく考えたら凄く切ない。車内での喧嘩で主人公の実家暮らしを馬鹿にしてたのに「うどんが美味しかった」って話す所で結構感動してしまった。

銭湯の店主、最初は割となんでも受け入れられる良い人なのかなぁと思ってたけど、実はそれこそが彼の弱さで自発的に何かを決めるという勇気を持てない人だった。このどんでん返しは全然予想出来なくて普通にビックリ。
でもここまで追い込まれた状況じゃないにしても、こういう人はどこの会社にでもいるし、改めて普遍的な上司像なのかなという気もしてくる。

ヤクザ役の人も素晴らしくて、じわじわと嫌ーなプレッシャーのかけ方が笑っちゃう位に暴力的で最高。分かりやすく自分以外の人間を道具としか見てない人。結局彼がどういう意図で殺す相手を選んでいるのか全く明らかにならないのがうすら寒い。

その他のキャストも全員素晴らしいのだけど、知らない人しか出てない映画なので、普通にシネコンで流れる映画の様に俳優さんの大物具合のメーターがなくて観てる間中、誰が重要な存在になっていくのか予想出来なかった。この辺は「カメラを止めるな!」でも感じた無名な俳優さんしか出ないからこその強みだと思う。

個人的な好み的には、ちょっと人の死の扱いがいくらなんでも軽すぎると感じたり気になる所が無い訳じゃないけど、それ以上良い所が沢山あったので満足。面白かった。

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