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ジョジョ・ラビットの感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
初週土曜の朝一の回で結構混んでた。

タイカ・ワイティティ監督作はソーラグナロクだけ観た。
ラグナロクはクリス・ヘムズワースの爆笑かっさらい演技や、煌びやかな宇宙描写などで楽しい映画なイメージを持たれがちだけど、1人の男が過酷な地獄巡りの末にそれでもなんとか王としてのアイデンティティを取り戻す最高に熱い話になっていて僕はとても感動的な作品だと思っている。ソーが父親とする最後の会話の「あなたの様に強くない」「いや、もっと強い」からの復活はMCU史上でも屈指の名シーン。

あとアクションシーンの組み立てとかも実はめちゃくちゃ上手くて中盤のソーとハルクの喧嘩シーンも堂々たるものだったし、ラストの「移民の歌」に乗せて繰り広げられるヘラ戦も鳥肌が立つ程カッコいい。ルッソ兄弟の様なスピーディーさはないけどアメコミとしてのキメ絵みたいなセンスはMCUの中でもトップクラスだと思う。

という感じで、人間ドラマを描ききる技量にコメディセンス、そしてかっこいいアクションと、何でも撮れる監督だと思っていたので、AKIRAの監督に抜擢されたのも分かるし、今作の様にアカデミー賞に次々ノミネートされる様な作品を撮れるのも納得だった。

主人公ジョジョ君。
途中エルサに恋人のふりをして手紙を書くシーン。
彼女への仕返しの為にやったんだけど、思いの外彼女にダメージを与えてしまった事に戸惑い翌日にまた手紙を書く所で、結局本質的な優しさを捨てる事が出来ない彼の子どもらしさグッとくる。

最初の対になる様にラスト鏡の前で1人自分を奮い立たせるシーンが凄く好き。
ここで自分の年齢をいう時「10歳」から「10歳半」と変わる所で泣いた。彼にとって明確に違う「半」という決して甘くなかった成長の時間に胸が打たれる。
あと「靴紐を結べる様になる」というシーンで彼の成長を描き感動させるのが凄く巧み。全世界の誰もが共感出来る小さいけど大きい、大人へのステップを映画的な成長として描ききっている。
自分で結べる様になる所ではなく、母の靴を履くエルサに結んであげられるくだりで回収されていくのに号泣した。

見た目も佇まいもスカヨハに似てるので親子としての説得力が素晴らしい。

スカヨハ。
マリッジ・ストーリーの母親役も印象的だったけど全然違う強い母親役でまあ演技上手い。
とにかく綺麗だし男前でカッコいい。

正直息子に全く知らせてないのは逆に危なくないのかな?と思わない所もないけど、ギリギリな綱渡りの様な立場が分かってくる度、息が詰まりそうになる。

彼女は息子とエルサが交流している事をはっきり知らないまま亡くなってしまうのが切ない。ただ目の届かない所で子供達はちゃんと成長しているし、彼女の意思はしっかり彼らに届いているという部分にも凄まじく感動する。

エルサ。

常に凛とした態度なのがカッコいい。ジョジョと初めて会った時に彼を脅かす為にホラー的な動きで手玉に取っていくのが微笑ましい。(後ろで慌てふためくワイティティも最高)

中盤のナチの秘密警察とのサスペンス描写での表情が素晴らしかった。「そんな目が泳いだらバレちゃうよ!」と心底ハラハラした。

サム・ロックウェル。

おそらくスカヨハが投獄されてるのを知って駆けつけた感じなのかなと予想した。

この人がなぜ彼らを助けたのか、セリフなどで一切説明されないのが上品。
彼がゲイである事や戦況に対して客観的で軍人として、とりあえずは仕事をしている所などが、エルサを助けるシーンで全部繋がるようになっているに感動する。

ラストの自己犠牲シーンの優しい顔が素敵。同日に「リチャード・ジュエル」も観ていて本当こういうはぐれ者優しい演技素晴らしいよね。

お供のアルフィー・アレンも何かやる度いちいち面白い。ここまでクセがなく良い人の役初めて観た。アルフィー・アレン新境地。

ワイティティヒトラー。
逸話的な情報だけをまとめて子供の頭の中で膨らんだファンタジーヒトラーの造形がそのままジョジョのナチスに対する憧れを表している。

ラストはジョジョが乗り越えるべき敵として立ち塞がるのだけど、前半は彼の心が折れない様に優しく守っている存在で父親代わりにもなっている。
イマジナリーフレンドなので彼が大人になる為に消える訳だけど、実際のヒトラーの死によってあからさまに見窄らしくなっていくのが切なくもある。

演じるワイティティはとにかく楽しそう。基本的に全部演説調で(ジョジョが演説してるヒトラーしか知らないから)場所を問わずデカい声を出しているのに何回も笑った。

戦場描写としてもしっかり撮られていて、市街地での爆破シーンや、意気揚々と戦場に突撃していく子供達や女性達や老人達がブラックコメディ的なテンポで描かれていくのが僕はかなり怖かった。
ここのレベル・ウィルソンの役柄が笑ってしまう位に好戦的な人として活躍するのだけど、男が少なくなったからこそ活躍のチャンスが巡ってきた訳だし、色々と割り切れない気持ちになった。

映画が始まってめっちゃ英語だな、とか一瞬気になったけど、寓話的な反戦映画だしすぐに気にならなくなった。
突っ込みどころみたいなものも他に沢山あるんだろうけど、チャーミングなアプローチの作品だし個人的にはあんまりブツクサ言うのも野暮な気もする。

そんな感じでこんな軽やかさと感動のバランスの戦争映画って僕は味わった事が無かったのでとても好きな作品になった。

ソーの4もますます楽しみになったし、AKIRAの実写版も是非観たい!

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