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ファルコン&ウィンターソルジャーの感想(ネタバレあり)

観る前はアベンジャーズの中でも若干地味な2人のバディものという事で(失礼)、そんな本編に絡まないミニシリーズなのかなぁ位の気持ちで、あまり期待せずに観始めたのだけど、結果的にはなんでもありのMCUの世界の中で僕らと同じか、それ以上に力無き人々に寄り添った視線の超重要な大傑作に仕上がっていた。

個人的には単体の作品だとMCUの中でもトップ3に入る位好き。

力無き人々の目線

前半はこれまでMCU世界の中の大きな闘いの中で、ある意味ないがしろにしてきた人々の目線で話が進んでいくので、今までMCU作品を楽しんできたからこそ観ていて居心地が悪くなってくる。
最初の方にサムとバッキーが「今回の敵はビッグ3かも(機械人間、異星人、魔法使い)」とギャグ的に話すのだけど、ここでこれまでの様な大きな闘いの作品とは違いますよ、と宣言してるみたいだ。

スティーブ・ロジャースも体の弱さで世間から軽んじられる存在からキャプテンアメリカになった人だけど「キャプテン・アメリカファーストアベンジャー」で描かれた彼のサクセスストーリーは、やっぱり無邪気な冒険活劇だったと改めて感じる。

だからこそサムがこれまで大きな権力に振り回された人々を代表するキャプテンアメリカになっていくのが感動的だったし、コロナ禍で政府に対して不信感を持って暮らしている僕らの気持ちともリンクする様な演説が重い意味を持って心に響いてしまう。

MCUクオリティのアクション

冒頭の救出ミッションから「キャプテンアメリカ/ウィンターソルジャー」でキャップが船に侵入して敵を倒していく華麗なアクションシーンを思い起こす。
というか敵役が一緒なので意図的な演出なのだけど、今回は天気の良い中での空中戦なのでとてもスカッと楽しいシークエンス。
こういうこれまで観てきたファンに対してのサービス精神は流石。

最終回のアクションシーンも素晴らしかった。
サムが常人である事を翼を使ってカバーして、超人血清を持つ敵と見事に渡り合っている事に全く違和感がない。
これまでの映画シリーズだと飛びながら銃撃するパターンが多かったけど、盾を組み合わせた飛行戦闘スタイルがどれも新鮮で思わず「おお!」と声が出た。
そして人命救助シーンが沢山あったのも素晴らしかった。
人を助けて民衆がそれを讃えるというシーンはMCUはあんまりやってこなかった印象だったので観ていて気持ちが良い。
しかもそういう人命救助シーンも1人で全てを抱え込むのではなく、バッキーやシャロンに頼ったり人質自身に協力してもらったりしているのが、決して超人ではない彼のヒーローとしての在り方を表しているみたいだ。

登場人物

サム

これまでアベンジャーズの中で地味な扱いをされていたけど、MCU世界内でも同様で世間から知られてはいるけどなめられがちな雰囲気。
俺ファルコンなんで!ってアピールしたけど銀行からお金借りられないシーンとかは観ていてなかなか辛い。
でもそういう作品を観てる僕等と同じ様な苦悩を持っている彼だからこそ、人々の痛みを代弁する様な今の時代に相応しいキャプテンアメリカになっていく構成が本当に素晴らしかった。

毎話エンドクレジットの時に流れる彼のテーマ曲の使い方も良くて、1話目位ではなかなかカッコいいじゃん位の印象だったけど、全てを受け入れ自分にしかなれないヒーローになるべく盾のトレーニングで流れ出すシーンで「ルイジアナヒーロー」というタイトルの意味が繋がって、まあ泣いてしまう。
ここで彼の走り姿が印象的なのだけど、キャップと初めて会ったのもランニング中だった。
あの時は一般人とキャップの身体能力の差を出す為の当て馬的な役割だったけど、今回のトレーニングシーンは超人的な能力は無くても、いや無いからこそ彼に希望の象徴の盾を持つ資格があるのだ!と、宣言してる様で泣けてしょうがない。

姉との会話の「世界を救いにいかないの?」と言われ「俺の家族だって世界の一部だ」と答える所はさりげないけど、超人じゃない彼のスタンスを象徴している様で感動的だった。

最後は力じゃなく、キャプテンアメリカとしての心と黒人である彼にしか語れない言葉で、希望の象徴として宣言し、力がない人達から見たらあなた達にはサノスと同様の力があると言うシーン、フィクションの中から現実に力を与える様な素晴らしいシーンだった。

今観るとコロナ対策で圧倒的に無能な日本の政府に感じてる不信感をフィクションの中から語ってくれているみたいでより胸に迫ってくる。

演じたアンソニー・マッキー。
ハートロッカーとかでめちゃくちゃ演技上手いのは分かってたけど脇で輝く俳優さんというイメージだった。でも今回初めて主人公の作品として観たら、こんな良い面構えの俳優さんだったんだなぁと、全然意識してなかった自分が軽く恥ずかしくなった、、、。

バッキー

洗脳から解放されても重い過去から当然逃れられるはずもなく、ずっと苦しんでいる。毎度毎度こういうキャラに対して比較で出して申し訳なくなるけど僕はやっぱ「ランボー」を連想してしまう。結局ずっと自分の中の戦争から逃げられない。

そんな彼がサムに盾を託すことでサムの実家で悪夢じゃなく子供たちの遊ぶ声で目覚められたシーンは彼の止まっていた時間が少しずつ動き出した事を示しているみたいで泣けた。

正直ラストの彼が罪と向き合う展開に関してはもうちょっと描いて欲しかったというか踏み込んで欲しい印象もあるけど、その辺は次回のキャプテンアメリカ4に引き継がれていくと思うので彼の物語がどう決着するのか今後に期待。

ジョン・ウォーカー

二代目キャプテンアメリカに決まり第1話の最後のウインクをする所で、個人的には「ザ・ボーイズ」のホームランダー的な悪役になるのかなぁ?と予想したのだけど、流石はMCUでそんな一筋縄にいかず、あくまで地に足のついた人間として描いている。

盾を持つ事の重責と執着に囚われていく描き方が丁寧で、スティーブ・ロジャースになろうとしても決してなれない葛藤が観ていてとても辛い。
それでもキャップと同様な敵を倒す力を得れば認められるんじゃないか?と超人血清を投薬するのだけど(一回打つ前に相談している辺りが人間的だと思う。)友を失いどんどん人間性を失っていく。
このマスコット的存在→単独での任務→友の死というルートがそのまま「ファーストアベンジャー」のキャップと同じなのに、彼はどんどん心が壊れていくのがなんとも皮肉。

だからこそ最終話で人の命を救うか、復讐か、どちらを選ぶか迷った末に、救助を選ぶ所はまあ泣いちゃう。
瀬戸際で人間性を取り戻し、ラストのサムの演説の所で視線だけでサムを次のキャプテンアメリカと認める所も凄く良かった。

それだけに「USエージェント」としての今後の展開がとても心配、、、。

演じたワイアット・ラッセルが本当最高で、普通に人が良さそうな雰囲気と、サイコっぽい雰囲気の両方を兼ね備えていて観ているこちらとしてはどっちに転ぶかハラハラしてしまう。

カーリ

指パッチンから復活した人によって難民化し家を奪われ、現政府に反旗を翻した人々のリーダー。
やっぱこういう新しい形のもうヴィランとも呼べない正しさを持った人々を敵役として持ってくる辺り流石MCUだと思う。
彼らの目線からすればエンドゲームでのアベンジャーズの活躍も全然違った印象がしてくる。

最終回で「私が死んでもこのムーブメントが続けば良い」と話していたけど、彼女の痛みや想いをサムが引き継いで世界中に発信する結果になるのが切なくも感動的だった。

ジモ

「シビルウォー」では超人的な能力がないのにアベンジャーズ同士を潰し合わせた実はなかなか手強い人。
その結果アベンジャーズは戦力が分散した訳だし「インフィニティウォー」での敗北とも無関係ではないと思う。

アベンジャーズ最大の失態であるソコヴィアの被害者の怒りを具現化した様な人だったけど、キャップも居なくなったしアイアンマンももう死んだし、今回はなんだか気楽な雰囲気すらする。クラブ(?)でのダンスシーン可愛い。
超金持ちでめちゃくちゃ戦闘力も高い事が、明らかになってヴィランというよりはDCのバットマンとかに近い印象。

ただやはり超人的な能力を持つ人間が権力を持つ事は許せない様で革命を起こそうとしているカーリに対しては明らかに殺意を持っている。

最終的に刑務所に逆戻りしたけど、まああれで終わる感じがしないのでキャプテンアメリカ4に出てくるんじゃないかな。

というかMCUの刑務所、前から思ってたけどザル過ぎるだろ。


シャロン

キャプテンアメリカ二作目の製作時点では別ルートの三作目の可能性もあったけどケヴィン・ファイギがシビルウォーに決定したせいで、活躍がほぼなくなった人。しかもあの時キャップを助けた事で国外逃亡する羽目になり今もアメリカに帰る事が出来ず、よく分からないヤバい国で闇ブローカーをしているというファンからするとなかなか衝撃の展開。

今回もサムやバッキーの手伝いだけさせられて損な役回りに回るのかと思いきや実はめちゃくちゃ裏で糸を引いて、最終的には新しいキャプテンアメリカになったサムの手によって彼女がやりたい放題出来る環境を作ってしまう。
さっきまであんだけ感動的だったサムの偉業すら私欲の為に利用する人が出てくる事を提示していて、観てるこちらに対し「いやいや、さっきの演説で分かった気になってんじゃないよ」と、言ってきてるみたいで真摯にすら感じるし、彼女のサクセスストーリーは始まったばかり!と不思議にカタルシスすら感じる。

イザイア

スティーブ・ロジャースの活躍の裏で歴史から消された人。
勝手に危険な人体実験をされ、超人ソルジャーとしての力を与えられても、英雄にはなれず何故血清が効いたのかを調べる為にモルモットとしてアメリカに消費される。

彼の事を考えるとキャップはやはり白人という事だけで恵まれていたと感じてしまう。
というかキャプテンアメリカウィンターソルジャーの時も思ったけど、シールドマジでクソ組織だな。

ラストのもう死んだ事にしといて欲しい、と願っている彼にサムが「絶対に忘れない」という想いで記念碑に連れて行き抱き合う所はそりゃ泣いてしまう。孫の反応の仕方とかも含め胸がいっぱいになる素晴らしいシーンだった。

という訳で、キャプテンアメリカ4作目も決まったみたいだしとても楽しみ。

やっぱMCUは凄い、、、。

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