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「ロキ(シーズン1)」の感想(ネタバレあり)

ディズニープラスで鑑賞。

MCU、今年に入って早くも3本目のドラマシリーズ、同時期に映画館ではブラックウィドウがやってるし、とてもハイペース。
しかも来月からは初のアニメシリーズ「What If...?」が始まるし、ほぼMCU作品がない時期がない位の感覚になってくる。

ロキという人

これまでの作品の中でも今作がちょっと特殊なのは、終盤は良い人にはなっていったけど、アベンジャーズ一作目直後なのて、どちらかと言うとヴィランであるロキというキャラクターを主人公にしている点だと思う。
彼自身が言う「完全な善人も完全な悪人もいない」という言葉がそのまま自分の事を言ってるみたいだ。

自分が死ぬ運命を知ってしまい(ここの表情の変化の出し方、トム・ヒドルストンの名演が凄すぎる)メビウスに「人を傷つけるのは楽しくない」という彼の本音の善意(の様なもの)が垣間見える瞬間から、ただの嘘つきから彼が成長していく。

「お前ら役人に私の物語を定めさせたりしない!」に対して「あなたの物語ではありません」とバッサリ返される所はMCUの中でも結構重要な目線のセリフだと思う。
これまで悪役としての役割を演じたキャラクターはその後主役になれることは無かったし、善意に目覚めても最終的に死ぬ事が多かった。
つまり極端に言うとヒーローがいる物語の中での障害物や盛り上げ役としての意味しか与えられていない。

もちろん娯楽作品とはそういうモノだと思うが、これまで世界で一番支持されているヒーロー映画を作り続けてきたMCUが、決してヒーローになれない人の視線に寄り添う作品を作ろうとしているのは、とても凄い事だと思う。

そんなヒーローではない彼の魅力は何なのか?常に自分が生き残る為にどうすればいいかを考えて立ち振る舞っている感じはとても小狡くいかにもロキらしいし、シルヴィが出てきた辺りから振り回されてドジばかりしてしまうダメさもまたロキらしい。
改めてロキという人の魅力をトム・ヒドルストンの名演によって観てるこちらに刻み込んでくる。
そして終わる頃には彼の事が好きになってしまっているのだから、それだけでこの作品は勝ちだと思う。

TVA

アベンジャーズの行動は予定通り、と言うセリフからヒーローが世界を救う為に行ったタイムスリップが想定の範囲内だったのは結構衝撃。エンドゲームのヒーローのあの偉業すらもこの世界の中では通常運転で、これまでのMCU世界の最重要アイテムのインフィニティストーンが大量にあって文鎮に使ってたりするし、こないだの「ファルコン&ウィンターソルジャー」とはまた違う意味でエンドゲームの感動に冷や水をかけられる。

職員は全員元々変異体でシルヴィと同じく誘拐されて洗脳された感じ。
オーウェン・ウィルソン演じるメビウスがとても良くて、ロキも言ってたけど道化として自分を無意識的にコミカルに演じてる印象なのだけど、時々滲み出る人間味みたいなものの出し方が切ない。ジェットスキーの話をする表情にグッとくる。

シルヴィ

マルチバース的な要素を匂わせては避けてきたMCUだけど、ついに違う時間軸の同じキャラクターを出してきた。
ただ彼女はトムヒロキの様に家族とのゴタゴタが起こる前の少女時代に1人ぼっちになったので、アベンジャーズにボコボコにされる様な悪役ではない。
単純にTVAに恨みを持ち自分の人生を取り戻す為に闘う。

第3話からのロキ同士のラブストーリー展開は結構衝撃だけど、自分以外の人に心を許せなかった人同士が自分と同じ存在だからこそ恋に落ちていく。一生孤独なロキという人の切実な救いになっていくのが観てて切ない。

あと彼女の能力がロキと違う心を操れる力がありそれを共有していくのも面白かった。
しかしロキの能力って魔法なんだ。多分こないだの「ワンダヴィジョン」のスカーレット・ウィッチの能力も魔法と同系統の能力っぽいし、いよいよ次のドクターストレンジとつながっていく感じ。

ロキアッセンブル

TVAに消された先にロキがいっぱいいる展開も面白い。
他のキャラクター全然居ないのにロキばっかなのが、この世界でロキだけが時間からはみ出しがちな存在という事を示唆している。

しかしロキ同士だと、スパイダーバースみたいにスパイダーマン同士で協力体制になる訳じゃなく、半分以上ゲスで裏切って成り上がる事しか考えてないのがいかにもロキバースっぽい。
地下のアジトでのドッタンバッタンな乱闘はコミカルなのだけど、後にカーンが語る多元宇宙での自分と自分による戦争の恐ろしさの縮図にもなっているのが上手い。
ここがあるからこの先に待っているめちゃくちゃ大規模な戦争の予感が、怖い&ワクワクしてしまう。

印象に残ったロキで言うとワニロキが可愛い。
他のロキと違いあくまでワニとしての能力しかないのに笑う。
それとソーを殺してしまったロキが一番讃えられてるのは、やっぱりロキ内では一線越えたカッコ良さなのか。

しかしなんと言っても一番熱いのがおじいちゃんロキ。
インフィニティ・ウォーの変な所から登場して実はサノスに殺されたの分身じゃない?と思える所があるんだけど、あそこで本当にそのまま死を偽装して逃げ続け年老いたというのが切ない。
孤独のままでいたら死んでるのと変わらないから、相手にされなかったのに老い先が短くなって、ソーに会いたくなった事でTVAに見つかってしまう。この辺はシフが言ってた「あんたは一生孤独」という言葉が重く響いてくる。サノスに殺されない別の人生すら決して充実したものではなかった。

だから孤独の末に出てくる彼の最後の魔法が「故郷」を再現する事で、別の人生を生きる自分にエールを送るシーンは熱すぎて泣いた。

カーン

今回のヴィランでありながら彼もまたロキと同じく「完全な悪人も完全な善人もいない」と言う言葉を体現する様な存在。
おそらくサノスよりも力を持った存在でありながら、多元宇宙の守り神でもある。

第一話でのメビウスの問答でロキがなりたいあらゆる自由意志を支配する存在こそが彼だ。
その彼の立場を継ぐ事が出来るチャンスを捨ててでもロキが願っている事が「私はお前に幸せでいて欲しい」というシルヴィの幸せを心から願うセリフだったのがめちゃくちゃ感動してしまった。
というかこの終盤、会話劇のみで全然画が動かないのに3人の役者の名演のみでグイグイ引き込んでくるのがかなり凄い。

この後真に恐ろしいカーンが登場するのは今後の作品群の中からだとは思うけど、シルヴィの彼を殺す決断によりMCUの行き先が定まってしまった感じがあり、エンドゲーム後の作品の中では今の所このロキが最重要作品になってしまった気がする。
今後のMCUも本当目が離せないなぁ、、、。

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