見出し画像

魔女がいっぱいの感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
普通に子ども連れのお客さんが多くて結構意外だった。

ロバート・ゼメキスが監督で脚本にギレルモ・デル・トロは入っているわ、製作にはアルフォンソ・キュアロンは入っているわで、とにかくめちゃくちゃ豪華。

子供向け映画として作られてはいるけど、ギョッとする位悪趣味なシーンが多いし、お話の着地も最近のディズニー映画とか見慣れている子供たちが観るとビックリするのではないかな(というか僕は原作知らなかったので普通にビックリした)

子供を恐怖のどん底に突き落とす魔女の物語と、大監督達が何も知らずに映画を観に来た子供たちにトラウマを埋め込もうとしている構図がなんとなく重なって面白い。


熟練監督の技

冒頭の車の中で逆さまに降る雪の描写からグッと引き込まれる。
映像的なこだわりはさすがのゼメキスだし、両親が亡くなった主人公の心の痛みの描き方や、祖母であるオクタヴィア・スペンサーに少しずつ心を開いていく描写が丁寧でとても感動的。
レコードをかけて画面から消えたかと思ったら歌に合わせて飛び出てきて踊るオクタヴィア・スペンサーのシーンとか間が上手くて思わずポロっと涙が出てしまう。

語り口も手際が良いし、笑い所も沢山あって最後までまったくだれることなく楽しく観れた。

悪趣味さ

前半の魔女に鶏に変えられてしまった女の子のシーン辺りから映像的な悪趣味さが際立ってくる。
あごの下にできもの出来た?からの人体が変容していきだんだんと鶏になっていく気持ち悪さもなかなかだし、中盤ネズミに変えられる主人公の描写も体に皮膚病みたいなのが浮き出るワンクッション置くのとかも、結構ショッキング。
なによりそういう事態になるのが子供ばかりで「こんななんも悪い事していない子供にここまでやる!?」と驚いた。
そういえば「チャーリーとチョコレート工場」でも同じように子供がえらいことになるシーンが多かったし原作者的にはよくあるモチーフなのかもしれない。

ノリノリなアン・ハサウェイが楽しい

オクタヴィア・スペンサーとアン・ハサウェイ名女優二人の演技合戦も見応えがあった。
普通の映画と比べるとちょっと倫理観がぶっ壊れている世界観の中でどっしり人情味を醸し出すオクタヴィア・スペンサーに対し、イキイキ楽しくド外道を演じるアン・ハサウェイの楽しそうな事。なかなかバランス難しそうな魔女設定だけどこの上なくコミカルさと憎々しさを体現できていたと思う。

ホテル入るシーンの「猫は駄目です」って言われる所で「あ、魔女だし催眠術的な魔法で切り抜けるのかな?」と思ったらハイテンションに屁理屈言って普通に誤魔化そうとしてて笑った。
振り返るとビームみたいなのを撃って消し炭にする魔法とか空飛んだりはしてたけど、人間に闘いを挑めるほど強くはないし万能じゃないっぽい。
あくまで「子供が嫌いなのでいなくなって欲しい」という事以外は特に目的もなかったみたいだし、そもそも毒入りのお菓子を売るって言うのもめっちゃ地道過ぎて涙ぐましい。
所々で入る「何するのにもお金かかるし嫌だ」とか「ここは人いないしみんなカツラ取っていいよ」とか生きているだけで息苦しそうで哀れみすら感じてしまう。

ヒステリックに泣き叫んだり、口汚く子供を罵ったりしてもやっぱりアン・ハサウェイがやると圧倒的に華があって憎めないというか観ていて好きになっちゃうのだから不思議。
ラストの汚いネズミになってジョジョの悪役みたいな罵倒を繰り返している所とか演じてて本当楽しそう。

物語の着地

それと主人公が人間に戻るのを諦め、ネズミとして楽しく生きていく事を選択するラストは普通にビックリしたし、凄い前向きに「魔女共を根絶やしにしてやるぜ!」で終わる切れ味もディズニー映画とかでは味わえない余韻でとても新鮮。

振り返ると実は凄く悲しい話にも感じるけど、そういうネガティヴさを全く見せないし、異形として生きていく事の何が悪い!という部分はデルトロが脚本に入っているのが効いてる気がする。

そんな感じで大傑作というテンションでもないけど、全シーン安定した面白さと最近の映画には珍しい変わった余韻で終わっていく良作だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?