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イップ・マン完結の感想(ネタバレあり)

京都みなみ会館で鑑賞。
前作の「イップマン外伝マスターZ」の時は改装中だった為、他で観たけどやっぱり京都で「イップマン」シリーズを観るならみなみ会館というイメージ。
コロナの影響で上映は延期になるし、みなみ会館自体が休館になったり、不安だったけどここで完結作が観れて良かった。

上映初週の土曜でお客さんは当然の様に混んでいたし、僕も含めシリーズ完結を見届けるぞ!っていう熱量が高い人が多かった印象。

このイップマンシリーズに関しては全作鑑賞していたので(パンフ読んだら派生作品が多すぎてビックリした)、今回の最終作ももちろん楽しみにしていた。

単体として作品なら前作のスピンオフ「イップマン外伝マスターZ」が一番好きなのだけど、本筋のイップマンは徐々に歳を重ねて時代や家族との関係の変化を一緒に味わっていくのが大事なので今作でいよいよ最後となるとやはり感動が尋常ではない。

パンフレットにあるドニー・イェンのインタビューで「私たちはこの人物をドキュメンタリーとして制作せずに、家族という概念と武術に対する信仰を備えたスクリーンヒーローとして描きたかった。」言ってる通り、伝記映画としての側面より、何よりエンターテイメント映画として面白く作ろうとしているシリーズだと思う。

イップマン
二作目のボクシング対決の最後に「私は勝ったが中国武術がボクシングより勝っているわけではない。私は信じている。人はそれぞれ身分の違いはあれど、その品格は同じで貴賤の区別はないと。今この瞬間から私達が心を開き互いを尊重できるよう願う。」というスピーチをするのだけど、彼のキャラクターをかなり象徴している気がする。
そしてこれがそのままアメリカ的な理想像を表している様にも思えるので、今作のラストのほぼトランプを具現化した敵を倒した時に、抑圧されていた軍人さん達が自らの意志で彼に拍手をする所は今の生き辛い時世に対して軽やかに正しさを通しているみたいで感動する。

今回は前作以上に人を助けに入る時のヒーロー感に上がる演出が多くて最高だった。
特にいじめられるルオナンちゃんを助ける所と、中秋節での乱入シーンは「かっこいい!」って声出そうになる。

息子との向き合い方は結構不器用で、思わずひっぱたいてしまった事を劇中ずっと後悔している。ルオナンちゃんと話してる時に「ウチも全然人の事言えないな、、、」って顔する所がかわいい。

「継承」の奥さんの為に木人椿を打つ所がシリーズ屈指の号泣シーンだったけど、今回は自分の命の終わりを受け入れ次の世代に託す為に打つ。そこに過去の名場面が重なり、ブルース・リーの目線でのお葬式シーンで終わっていくとなれば、そりゃまあ泣くしかない。イップマンありがとう!

ブルース・リーは今回ついに大活躍。
前作のイップマンが投げる煙草を蹴っ飛ばすシーンとかも良かったけど、今回はバリバリ対人戦で「強くてカッコいいブルース・リー」を堪能出来る。

空手家相手に複数の敵との闘いや、お馴染みのヌンチャクを使用した見せ場など本当に盛り沢山。

パンフで読んだら実際のブルース・リーは行く事が出来なかった、イップマンのお葬式に彼が出席しているシーンで終わるラストも素晴らしい。

「継承」での奥さんとの最後の時間の描き方もそうだけど(奥さんを佛山に残した状況で、香港との国境が封鎖された為、実際は死に目に立ち会えなかったそうな、、、)、実際は悲劇的だった事実に対してフィクションだから出来る救いを描いてているのがとても好きだ。

最初のライバル的な存在になるワン師匠とのアクションを絡めながら関係を深めていく描写が丁寧。

いきなり険悪な雰囲気の中(毎度)ガラスの円卓テーブルでのどっちも譲らない押し合い。
最初は腕だけだったのが足を踏ん張りながら華麗に動きが変わっていく感じとか「うわ!今イップマンシリーズ観てるぜ!」って感じがして最高。
最終的に粉々になり絵で「決裂!!!」って表現してくる感じとかストレート過ぎて笑っちゃう。お茶の中にめっちゃガラスの破片入ってそう。

紹介状欲しかったら力尽くで取ってみろの所も娘を庇ってくれた事より、拳を交える事でイップマンの人柄を感じ取って認めていく感じがして、とてもスマートだしかっこいい。対決が終わる頃にはもう紹介状書く気満々の顔。

娘さんとのエピソードの描き方も素晴らしかった。この父娘との関係を通してイップマンも息子との向き合い方を考えていく様子に感動する。

ラスボスのスコット・アドキンス。

とても現代的な嫌なアメリカを体現した様な悪役。

まあしかし見事な蹴り技の数々は観ていて惚れ惚れする。動きの素早さやパワーなど圧倒的に彼の方が優勢ではあるのだけど、こういうパワー系の相手にこそ詠春拳のアクションが活きてくる。

元々女性の護身術として生まれた拳法らしいので自分より力が強かったり大きい相手に闘えるというのが重要な要素だと思う。

そういう意味で言うと「マスターZ」でのデイヴ・バウティスタVSマックス・チャン戦は「詠春拳だから勝てる」という所にカタルシスを置いてて本当素晴らしかったなぁ。

単体作品としても面白いけど、シリーズの集大成としてお馴染みの要素を意識的に入れている作品だと思うのでやはり全作を観てから、彼の最後の生き様を見届けてこそ意味のある作品だとは思う。

しかしドニーさんは再来週位から追龍も公開だし、ムーランも控えてるし、今後ますます楽しみだなぁ。

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