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風の電話の感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
お客さんは半分位埋まってた。
日曜なのにこんだけ豪華俳優出演の割には少ない印象。

地震や豪雨による震災、原発、原爆など日本で起こった悲劇の数々を、世界の片隅で生きる小さな人達の目線で語られていく。

とにかく演出が素晴らしい。特に印象的な「手」の演出の数々。

後々語られる繋いだ手を離した事による彼女の後悔に対して、同じ様に大切な人を失くした人達が「手を引いてあげる」「手を差し出す」「手を洗ってあげる」「握手する」という動作をさりげなくする事で彼女をこの世に繋ぎ止めている様で後追いで感動する。

モトーラ世莉奈。
いきなり無気力で疲れた顔なのだけど、叔母が倒れた事で完璧に心が折れてしまう。
そこから三浦友和のシーンから旅を続ける内に生きる気力を取り戻していく描き方が本当に丁寧。

段々と顔をクシャクシャにして笑うシーンが増えていく度観てるこちらも安心してくる。

三浦友和。
最初に彼女を助けてあげる人だけどこの人が、かなり重要な役割を担っていると思う。何故見ず知らずの人が彼女を助けるのか?という説得力が無いと、この後出てくる親切な人達も記号的に見えてしまう。
完全に心を閉ざした彼女に微かに希望を与えて旅に出るきっかけになる重要な役割なのだけど、流石の存在感で全然違和感無かった。

「赤ん坊かよ」とか言いながらぶっきら棒に世話を焼く様子が愛らしい。

彼女からすれば、写鏡的に自分と同じ様に大切な人を亡くした悲劇と後悔に悩みながらそれでも生きている親子と触れ合う事で救いになっていく様子がとても優しくて思わず落涙した。

山本未来とケンとカズでお馴染みのカトウシンスケの姉弟も絶妙だと思う。

カトウシンスケの髭の濃さが胡散臭さくて笑っちゃうのだけど、さりげない会話でその後ギャグになったりするのが良い。初めは姉に厄介な事に手を出すのを反対してた彼が春との別れ際の「5,000円ちゃんと返して」のセリフがとても優しくて良い存在感だった。

山本未来の深くは語らないけどおおらかな佇まいがカッコいい。

西島秀俊。
登場シーンから不穏で最高。ヤリ目ナンパのクソ野郎達に対しての佇まいがもう只者じゃない。相手を殺さないか逆に心配になる威圧感。

正直彼の日本中を旅している理由が僕にはあまりピンとこなかったのだけど、あの不器用さはいかにも西島秀俊感で妙に納得しちゃう。

急に三宅唱監督と絡みだしたりするのは組み合わせ的にビックリした。不穏な西島秀俊に対して三宅さんが一瞬「こいつなんだ、、、?」ってなる演技する所とか絶妙。

それぞれのエピソードが主人公を成長させる為にわざとらしく並ばせ過ぎている様に感じてはしまうのだけど、個人的には1エピソード1エピソードがしっかり面白いのでそこまで気にはならなかった。

ただ冒頭の主人公の境遇を紹介する字幕はちょっと説明し過ぎな感じがしたかも。
最初渡し舟のシーンの水辺に対する躊躇いでなんとなく津波がトラウマになっているのは分かるし、ああいう細かな演出の積み重ねで十分な気がした。

しかし一本の映画で日本で起こった悲劇の数々をここまで盛り沢山に詰め込み成立させてるのは凄いと思う。
監督の演出力が確かだから登場人物がしっかりそこで生きている人として感じる。見逃さなくて良かった。素晴らしかったです。

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