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ミッドサマーの感想(ネタバレあり)

TOHOシネマズ二条で鑑賞。
コロナの影響でどこで何を観ても空いているのが当たり前の中、結構大きいスクリーンでほとんど満席でビックリした。
スパイダーマンファー・フロム・ホームのコラボキャンペーンのゲロの匂いがするピザポテト味のポップコーンのせいで匂いが充満し映画を観てる間中吐きそうだった事件以来、TOHOシネマズはあまり行きたくなかったけど、アリ・アスターの新作がここでしか観れないので苦虫を嚙み潰した様な顔で行ってきた。

「へレディタリー継承」のアリ・アスター監督の新作。
予告の時点でのルックの明るさに全然違う作品になるのではないかと思っていたけど、嫌――な人間関係の描き方などは相変わらずでかなり近い要素も多かった。

まず映画が始まっていきなりフローレンス・ピュー演じるダニーの家族が亡くなってしまう経緯とかへレディタリーと連なる胸糞の悪さ。というかこの事件自体はホルガ村と関わりがない狂気による殺人&自殺なのが凄いと思う。
ダニーのトラウマとして存在はしているけど普通のホラー映画と一味違う。
しかしへレディタリーの妹を亡くすトラウマシーンも中盤位だったのにタイトルも出ないのっけからこんな嫌なシーンを持ってくる辺り、アリ・アスター今回も絶好調だぜ。

ただもちろんこの嫌な事件もお話としては重要な要素でダニーの人生の重りになっていく。
彼女と家族との関係は映画内ではあまり語られないのだけど、元々の彼女の精神的な不安定さも家族(特に妹)による所が大きそう。
それ故に自分を多分大事に思ってくれているであろう彼氏に依存している。

ラストは全てを捨て(というか生贄にして)もう普通の尺度では測れない存在として魂が開放される感じとかはへレディタリーのラストの祝祭的な雰囲気に近い。
あそこで誕生日を迎えるのとかとても象徴的。

細かいディティールへのこだわりは相変わらずのアリ・アスタークオリティ。
まずホルガ村という村そのものの絵としての強さが凄い。木にこだわった建造物の形の美しさや自然の中で映える色合いが計算尽くされていて観ているだけで幸せな気持ちになる流石のビジュアルセンス。お金のかけ所を分かっている。

あと本当この人は食べ物を不味そうに撮る名手だと思う。
へレディタリーの時から感じていたけど今回はあからさまに食べ物に何かガンガン気持ち悪い物を入れてくる感じが嫌。
何の肉か説明されないパイ(陰毛入り)、フワフワしたもの(言えない)が入っている飲み物など。
絶妙にいやらしいのは一見するとウルルン滞在記とかで出てきてもおかしくない見た目の料理になっている事。「スウェーデン料理ってあんまりピンとこないけど確かにこんな感じかも、、、」という嫌な説得力。

しかしこれだけ非日常的なキラキラしたビジュアルの映画なのに人間同士の会話のやだみみたいなものがとても生々しい。
特に男性グループ特有の下ネタによる女性を軽視する様な発言の数々や、心配するふりをしたりもするが、ぶっちゃけうっとおしいと思っている態度を全然隠せてない彼とそんな態度を分かっているが依存するしかない彼女の終末カップル感とか観ていてしんどい。(アリ・アスター監督のアトロクでのインタビューで「自分が恋人と別れた話を映画に取り入れた」みたいな事を言っていたけどこのカップル感はその反映なのかも知れない。だとしたら身を削り過ぎでは、、、?)

「グリーンインフェルノ」とか異文化コミュニティに迷い込む系のホラーに比べると恐怖は少なめで、そういう映画の見せ場であるはずの登場人物が残酷に殺される瞬間をほとんど見せないのが逆に不安な気持ちだけを掻き立てていく。
そういうシーンより残ったメンバーの「あいつ居なくなったけど何処行ったのかな?」と不安になる心情の方にスポットを当てているのでどんどん嫌な予感だけが膨らんでくる。この辺のジワジワ感も流石。

今乗りに乗っているフローレンス・ピュー。
「ファイティングファミリー」の時も感じたけどこの人は「私本当は全然平気じゃないけど全然気にしないでくださいね!」みたいな逆ギレしながらムッとしてる表情がめちゃくちゃ良い。次の「ストーリー・オブ・マイライフ」や「ブラックウィドウ」も超楽しみだなぁ。

ジャック・レイナ―。
「シング・ストリート」のお兄ちゃん以外は何かと巻き込まれる気弱な役が多い印象だけど今回もあんまり何も考えておらずフラフラ言われるがままついて来た人。
「俺もここをテーマに論文書くわ」とか「遅くなったけど誕生日おめでとう(ケーキみたいなものに、ローソクを立てて必死に火を付けようとしながら)」とか何とも頼りなくて駄目な感じが素晴らしい。
一番好きなのはおじさんに目の前で手をパチンとされて「なんでそんなことすんの、、、?」と言いながら半泣きになる所。ラストパディントンルックも素敵だった。

あと話題になっているボカシだけど、もちろん入れない方が良いんだけど、最初の暗がりで裸になった時点で入ってないのが不思議。あそこよく見たらチンチンが丸見えだったので、その後ピストン運動し始めたタイミングで入れ始めたのが意味分からなかった。ちゃんと隠すなら最初から隠せよ。こんなのAVとしても失格だよ。

全体としては観た直後あまりに不思議な手触り過ぎて「変な映画だなぁ」位の感想しかなかったのだけど、他の人の感想とかを読んでいる内に自分の中でも「こういう事かな?」とだんだん言葉が浮かんでくる様な感じで、最近は割とはっきり結論やテーマが分かる作品ばかり観ていたので、かなり新鮮な感覚で色々考えた作品だった。

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